一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。

お知らせ

乳幼児アトピーとリノール酸の関係について(社)日本植物油協会〜

最近、週刊誌で“乳幼児アトピーは「リノール酸」が原因”とする記事が取り上げられておりましたが、それにつきまして大きな誤解があると私ども社団法人日本植物油協会は認識しております。ここで当協会としての見解をご説明いたします。

1. リノール酸摂取の増加がアトピーの増加の主要因であるかどうかについて

アトピー発生の原因は複雑で、一つの要因に帰することができないものです。名古屋市立大学の奥山教授は、次の2)に述べますように、栄養学の立場からこれまでリノール酸の摂取が過剰であることを主張されてきた方ですが、週刊誌において突然に「アトピーの主要因がリノール酸である」と断定されております。しかしこのように断定するための医学的な因果関係についての立証が何らなされておりません。

またアメリカやブラジル等諸外国においては、リノール酸含有量の高い植物油が日本より大量に消費されています。しかしこれらの国々においてアトピーが増加しているという事実はありません。

2.日本人のリノール酸の摂取量は過剰なのかどうかについて

わが国のリノール酸の摂取は脂質摂取量の増加に伴って並行的に増えてきたことは事実です。当協会は、このホームページにおいて、脂質の過剰摂取に対する注意が必要であることと、脂肪酸の摂取比率を適正に保つことが大切であることをお知らせしています。

私どもの考え方は「第6次日本人の栄養所要量」(平成11年・厚生労働省策定、詳しくはこのホームページ内の「植物油INFORMATION・2000年3月発行号外“第6次改定における脂質所要量の読み方”」をご覧ください)に基づいております。

このなかで、
(1)脂質の摂取量は、総摂取カロリーの20~25%の間に保つこと
(2)脂肪酸の摂取比率として、n-6系といわれるリノール酸とn-3系といわれるリノレン酸等の脂肪酸の摂取比率が4程度であること
が好ましいとされております。

一方、名古屋市立大学の奥山教授は「リノール酸の摂取量は過剰であり、またリノール酸系脂肪酸とα-リノレン酸系脂肪酸の摂取比率を2~1にするべきである」という説を唱えてこられました。しかし「第6次日本人の栄養所要量」は、栄養学の権威が内外数千に及ぶ膨大な研究結果(論文)を検討され、今後の国民の健康及び栄養の向上に向けた指針として策定されたもので、奥山教授の研究や関係する学会の学説をも慎重に検討した上で判断されたものです。

なお、このn-6/n-3の摂取比率について、FAO/WHOでは5~10、アメリカでは4~6、ECでは4.5~6、イギリスでは6が好ましい数値とされ、いずれも日本の4を上回っています。体位・体格が異なる外国の事例がそのまま日本に当てはまるものではありませんが、日本のリノール酸摂取量が過剰であるとは考えられません。

3.乳幼児を持つ母親のリノール酸摂取について

乳幼児を持つ母親が、植物油よりリノール酸の少ないバターを摂取すれば母乳中のリノール酸が低下し、乳幼児のアトピーが防止できることが主張されています。しかしリノール酸は乳幼児の成育に欠かせない必須脂肪酸であり、これが不足すると順調な生育が妨げられる危険性があります。同時に母体自体の必須脂肪酸の摂取も不足することになりかねません。乳幼児の栄養と健康の問題はアトピーという一つの懸念だけで考えるべきものではなく、総合的な栄養判断に基づくべきであると考えられます。

4.まとめ

食生活が豊かになり、健康と栄養に関する情報への関心の高まりとともに、これらの情報も増えておりますが、ある特定の結果をもってあたかもすべてを判断できるかのごとき情報も氾濫しております。

このような環境の中で、皆様へできるだけ公平で適切な情報を提供申し上げることが、私どもにとっての使命であると考えております。このような立場から、脂質の摂取につきましては、「日本人の栄養所要量」において示されておりますように、過剰に摂取することなく、動物性・植物性脂質の摂取割合、それぞれの脂肪酸の摂取割合を適正に保って健康的な食生活を送っていただきたいと願っております。

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