一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。

植物油の道

9. 植物油の安全と安心のために

(1)二重の残留農薬チェック

 日本は多種類の油糧種子の供給を海外に依存しています。この為、安全な種子を確保することが最初に注意しなければならないことです。特に、残留許容基準値(Maximum Residue Limit)を超える農薬の残留には最も注意を払っています。

 残留農薬については、食品衛生法による規制が行われています。この規制は、食品の安全性を一層確かなものにするために実施されるもので、平成18年5月29日よりポジティブリスト制度が導入されました。この制度は全ての農薬残留を0.01ppm(一律基準)以下に置くことを原則とし、農薬の使用頻度に応じてそれぞれ最大残留基準値を定め、或いは、絶対に検出されてはならない農薬を定めています。

 まず、日本に輸入される油糧種子については、政府の検疫所によるモニタリング(残留農薬のチェック)により、残留許容基準値を超える農薬が検出された場合には製油原料として使用することは禁止され、処分しなければなりません。従って、製油原料として使用するということは、実は、この様な厳しいチェックを通過したものでだけあるということを証明していることになります。

 政府によるチェックだけではなく、私たちは輸入商社の皆様との共同により、毎年、新たに収穫される油糧種子について代表的サンプルをとり、農薬残留について自主的な分析を30年以上に渡り実施しています。その結果、異常な農薬の残留が発見されたことはなく、この実績は厚生労働省でも高く評価していただいています。

 農薬残留だけではなく、輸入時には植物検疫所による害虫検査が行われ、安全な原料の確保が行われています。これに加えて、仮に原料に農薬が残留したとしても、植物油の精製工程において除去或いは問題のない水準にまで低減することが、国の研究機関によって確認されています。ただ、これはあくまで補助的な機能であって、基本は原料段階でのチェックにより、残留許容基準を超える原料を製造工程に入れないことによって安全が確認されています。私たちは、安全確保のため引き続きこの様な努力を継続していくこととしています。

(2)油糧種子供給国との協力関係の継続

 油糧種子の主要な供給国であるアメリカ及びカナダとは、毎年、それぞれの生産者団体や輸出業界と定期的な協議を開催し、使用されている農薬の種類、使用の実態、それぞれの国における残留基準等に関する意見交換を行い、生産段階でも農薬が適正に使用されるよう努力を重ねています。また、菜種の輸出国であるオーストラリアとも情報交換を行っております。生産国においても農薬の適正管理は重要な問題となっています。それぞれの国が農薬の使用や残留について厳しい規制を設けています。アメリカでは、農薬を散布する人(農家又は散布業者)は、各州大学において講義を受け、農薬使用に関する許可証が発行されます。この講義では、農薬に関する科学的知識だけではなく、規制法令等具体的な使用の方法が教育されます。そして、実際に散布するときは、農薬の種類、使用量、その時の気候条件等を記録し、提示することが必要とされています。

 この様な厳しい規制はカナダでも同様に行われています。外国は農薬の規制が緩やかなのではないかとの懸念が消費者の皆様の間にある様に感じますが、日本と同等かそれ以上に厳しい規制が行われていることをご理解いただきたいと思います。

(3)製造工程における安全管理

 先に述べました通り、サイロに一時保管された油糧種子は、ベルトコンベアで搾油・精製の工程に入りますが、これらの工程は密閉された状態となっていますので、製造工程の途中で外部からの異物や病原と接触することなく最終製品が製造されています。従って、製造工程の運転管理を厳格に行えば、製品の安全を損なうということは起こりえません。

 この様な厳格な管理の実行のため、一般社団法人日本植物油協会に加入しているほぼ全ての工場はISO(国際標準)を取得し、これに基づいて運転することによって製品の安全管理には万全を期しています。

 また、優れた品質の製品を製造するため、全ての工場は「日本農林規格等に関する法律」(通称、JAS法)に基づく適正工場の認定を受けています。この認定は、JAS法で定められた日本農林規格(JAS規格)に適合する安全で高い品質の食用油を、安定して製造・出荷できるだけの要件を満たしていることが確認できる工場に付与されます。そして、これらの要件が継続的に着実に実行されることについて、中立の検査機関である「公益財団法人日本油脂検査協会」が定期的な立ち入り検査を実施し、確認しています。JASに関する詳細は、このコーナーにある「植物油とJAS制度」をご覧ください。

 また、主に家畜の飼料として利用されるミールについても、空中浮遊菌の付着防止や乾燥を適正に行うことによって細菌の繁殖を抑制しています。これらも、「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」によって、製造や保管が厳しく管理されています。

 私たちの製油工場は、安全で喜んで利用頂ける品質の製品を皆様にお届けするため、ここに述べました様な管理を日夜続けています。

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