一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。

verita×日本植物油協会

プロ選ぶには訳がある

-植物油の美味しさ大発見-

~シェフ御用達の植物油のおいしい魔法~
Vol.1 「全ての人の笑顔のためのケアリングフードを」EPICURE(東京・元麻布)

~シェフ御用達の植物油のおいしい魔法~ Vol.1 「全ての人の笑顔のためのケアリングフードを」EPICURE(東京・元麻布)

世界的な健康志向のなか、油への注目が高まってきている。油=悪と言われたのは過去の話。油は料理を美味しくするために欠かせない調味料であるのはもちろんのこと、今や油と上手に付き合い、良質な油を摂ることは、ヘルスコンシャスなライフスタイルを送るために不可欠な要素といってもいい。 そんな中、ここ最近、注目を集めているのが植物油だ。というわけで、verita編集部ではプロの料理人たちによる植物油を使った美味しいクリエイションを、全5回に渡って紹介していく。

Vol.01は、東京・元麻布のフランス料理店「エピキュール」を取材。同店のオーナーシェフである藤春幸治氏は、「すべての人の笑顔のために」をコンセプトにした「ケアリングフード」を提唱。アレルギーや病気で食事の制限が必要な人も、ハラールやヴィーガンの人も、誰もが気兼ねなく、笑顔でテーブルを囲むことができる同店には全国各地からゲストがやってくる。「食」という観点から人々のヘルスコンシャスなライフスタイルに寄り添うことを信条とする藤春シェフに、植物油に特化したメニュー3品を作ってもらった。また、自宅でも活用できる、植物油とより上手に付き合っていくヒントを尋ねた。

profile

EPICURE(エピキュール)オーナーシェフ 藤春幸治

東京・元麻布のレストラン「EPICURE(エピキュール)」オーナーシェフ。藤春氏が2012年にオープンした同レストランは、ベジタリアン、ヴィーガン、その他食事制限が必要な人すべてが同じテーブルを囲み、美食を楽しめる理想形のレストランとして人気を集めている。外資系ホテルなどで研鑽を積んだのち、からだの仕組みや栄養学をふまえ、現代の栄養過多な食生活を改善するバランスの取れた食事を独自に研究。新しい食文化『ケアリングフード』を創案した。現在はトップアスリートほか糖尿病やがんの患者まで様々な人への食事をサポート。日本内分泌学会学術総会、日本抗加齢医学会総会、日本乳癌学会学術総会など、医学会での食事監修実績も多い。

EPICURE(エピキュール)オーナーシェフ 藤春幸治

植物油の強みは、ライフスタイルや用途に合わせて選択できること。

「エピキュール」には季節のおすすめコースもあるが、食へのこだわりや体質や病状に合わせた、テーラーメイド型のメニューを作ってもらうことも可能だ。白砂糖、小麦粉、卵、動物性原料を使わない「ケアリングアイス」や、グルテンフリーでヴィーガンの唐揚げ粉などの商品の開発・販売も行っている。

同店にはからだの仕組みや栄養学をふまえた上で、からだに良く、なにより美味しい料理を求め、多くの人が足を運ぶ。過日、予約の電話を入れた際も、食へのこだわりについてこと細かに聞いてくれたのが印象的だった。

藤春シェフ:「動物性の食材は摂りたくないけれど低糖質のものがいい、ハイプロテインでヴィーガンに仕立ててほしい、脂質は10グラムに抑えてほしいけれど濃厚なものが食べたい、脂質を多くして糖質をカットしてほしいなどといった、さまざまなご要望にお応えしています。」

藤春シェフは、そう力強く言い切る。今回、植物油を使った料理をお願いしたのだが、そもそも「エピキュール」では、どのくらいの油を使っているのだろうか。

藤春シェフ:数えたことはないのですが、ゴマ油、亜麻仁油、米油、大豆油、アーモンド油、ココナツ油、MCTオイル……。オリーブオイルはエクストラヴァージンオイルとピュアを使っています。ほかにもいくつかナッツ系の油があったかな(笑)。これらを料理、そしてお客様に合わせて使い分けています。加熱して利用する際には酸化しにくい油を使いますが、基本的には、それぞれのお客様が安心して、美味しく食べていただける油を選択しています。複数の油を混ぜて使用することもあります。

脂質は炭水化物、たんぱく質と並ぶ、3大必須栄養素。重さあたりのカロリーが高いため嫌われることもあるが、脂質を構成する脂肪酸は、身体のエネルギー源としての役割と身体の組織を正常に機能させる役割を持つ、私たちが生きていく上で欠かせない栄養素だ。油=悪ではなく、いかに上手に摂取するかが大切なのだ。

藤春シェフ:上手な油の摂り方、それを実現してくれるのが、植物性油脂です。ライフスタイルや用途に合わせて選べるのは植物性油脂の大きな利点です。植物油は融点が低いんです。たとえば、常温では個体である牛脂やバターは融点が高い。牛脂は40〜50℃ほど、バターは34℃前後ほどです。一方、融点が低い植物油や魚の油は常温では液体状です。今回、植物油というお題をいただき、必須脂肪酸の摂取バランスを考えた料理を考えてみました。

少し難しい話になるが、簡単に油の構成について説明しておきたい。油の主成分は脂肪酸だ。その脂肪酸も不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸に大別される。不飽和脂肪酸は常温では液体で、植物油を構成する脂肪酸の多くはこちらに含まれる。また、青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は動物性だが不飽和脂肪酸だ。一方、動物性の油に多く含まれる飽和脂肪酸は常温では固体のものが多い。平たく言ってしまえば、サラサラの不飽和脂肪酸は消化する際に体に負担をかけない、良い油とされている。血中コレステロール値を減らすなど健康効果が高いことでも脚光を浴びている。

藤春シェフは、今回、オメガ系脂肪酸に着目したという。“良い油”とされる不飽和脂肪酸は、さらに大きく多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸に分けられる。多価不飽和脂肪酸は体内で合成できないため「必須脂肪酸」と呼ばれており、その主成分によってn-3系不飽和脂肪酸(オメガ3)、n-6系不飽和脂肪酸(オメガ6)の2種類に分けられる。n-9系不飽和脂肪酸(オメガ9)は一価不飽和脂肪酸だ。こちらは体内で合成できることもあり、必須脂肪酸とは呼ばない。

藤春シェフ:体内で作ることができないオメガ3と6は、食物から摂る必要があります。ですが、オメガ6は加工食品やサラダ油に多く含まれているので、意識せずとも自然に摂れていることが多いんです。

オリーブオイルに代表されるオメガ9は体内で作ることができる脂肪酸だが、高い健康効果から注目されている。コレステロールを取り除くことから動脈硬化や高血圧の予防効果が期待できる。

藤春シェフ:オメガ9は積極的に摂っていきたい油です。大切なのはバランスよく脂質を摂ること。私どもの店では、比較的、摂取しやすいオメガ6系の油はほとんど使用しません。ここに来れば、不足しがちなオメガ3、9を自然に摂取することができる、そんなことも意識しながら料理を作っています。

オイルの融点を巧みに構成した華麗なコンビネーションで魅せる前菜。

オメガ3系の油は加熱に弱いとされている。オメガ3を多く含む亜麻仁油やエゴマ油は飲むことを推奨されることも多いが、「なかなか続けるのは大変ですよね(笑)。でも脂質はバランスよく、そして、オメガ3を美味しく、効率よく摂っていただきたい」と作ってくれたのが、「紫蘇でマリネした鯖 ローストしたアーモンドとゴマ油ヴィネグレット」だ。ミキサーやハンドミキサーで細かくした紫蘇を、オメガ3系の亜麻仁油と、オメガ9系のオリーブオイルとあわせ、そこに軽く塩をした鯖を入れて丸1日浸けた。

藤春シェフ:「熱に弱いオメガ3系の油を、加熱処理をせずに摂ることができます。」

紫蘇を加えることで香りが移り、さっぱりといただけるのもうれしい。

藤春シェフ:ソースは脂質のバランスを考え、ごま油を使用しました。ローストしたアーモンドを同じ量のごま油と一緒にミキサーにかける、それだけです。ただ、ごま油だけだと中華料理になってしまうので、最後に酢を加え、ローストしたアーモンドと合わせることでドレッシングのように食べていただけるようにしました。酢ではなく、甘みを加えればデザートのソースとしても利用できると思います。

植物性油脂の利点である融点の低さを巧みに活かす"焼かない肉"の一皿。

メインの「オリーブでマリネしたグラスフェッドフィレ肉の低温調理 抗酸化力のマキベリーと米油のチュイル アボカドと米油のピューレ 米油のフォンドヴォーソース」は、植物性油脂の利点である融点の低さに注目した肉料理だ。

動物性脂質に含まれる飽和脂肪酸は、融点が高く、体内でも固まりやすいため、血流を悪くし、さらには悪玉コレステロールや中性脂肪の合成を促進してしまうという懸念がある。

藤春シェフ:低糖質、高タンパク、低脂質でありながら植物油を使うことで、体の負担をやわらげ、かつ濃厚さを感じさせる料理に仕上げました。米油やオリーブオイルの融点は16℃前後です。体温の半分ほどの融点の脂質は体の中でも凝固せずに体に負担がかからない。それでいて満足感も得られ、頭も納得します。

牧草だけを食べて育った、脂質の少ないグラスフェッドの牛肉のフィレをオリーブとハンドミキサーでクラッシュし、オリーブオイルを加えた液体でマリネし、55℃で低温調理した、 “焼いていない”肉料理だ。

藤春シェフ:タンパク質を高い温度で焼くと糖化といって体の中で活性酸素を生んでしまうんですよ。そんなわけで、いかに肉を焼かずに美味しく食べていただけるかを考えました。

ソースは米油を乳化させて作っている。さらに、「肉は酸化を促進することもあるので、抗酸化力のあるものを合わせて食べてほしい」と、ポリフェノールが多く含む南米のベリーのパウダーであるマキベリーと米油でチュイル状にしたものを添えた。ピューレは米油とアボカド油を、フォンドヴォーソースは米油を使用している。

藤春シェフ:ご存じのとおり、フランス料理では、通常、バターを使うことが多いのですが、低糖質が注目される今、カロリー過多になりすぎずに、必要なタンパク質、良質な脂質を摂取できる肉料理に仕上げています。

植物性脂質の完全ヴィーガン、グルテンフリーの至極のデザート。

デザートは、「3種のオイルと豆乳・ライスミルクを使ったババ、プーションコアントローとエマルジョンのソルベ ライスミルクソース」だ。名前からもわかるように完全ヴィーガンで、さらにグルテンフリーのデザートである。

藤春シェフ:ライスミルクに大豆油、オリーブオイル、米油を乳化させ、アイスクリームメーカーで回し、植物性脂質のソルベを作りました。融点が低いため、溶けやすいというデメリットはありますが(笑)、しっかり乳化させているので、口に油っぽさが口に残ることはないと思います。

1種の油、たとえばオリーブオイルだけでソルベを作ることもできるが、「今回、肉料理にオリーブオイルを使っているのであまりオリーブオイルの色が出過ぎないようにブレンドし、味を安定させました。」と言う。生地は高野豆腐と米粉で作り、そこにメイプルシロップとコアントローを浸み込ませている。

3皿ともエビデンスに裏付けされたロジックの上に成り立っている、安全安心の、そして記憶に残る美味しさの料理だ。植物油の果てしない可能性も感じさせてくれる。

藤春シェフ:「健康意識が高まったこともあり、今では、皆さん、油についてもよくご存知です。オメガ3は加熱に弱く、オメガ9は加熱に強いといったことをご存知の方も今ではたくさんいらっしゃる。今後は融点という概念にも注目してみてはいかがでしょうか。」

帰り際、スタッフが、「ちょうどこの後、良質の油を摂りたいというリクエストの予約を頂戴しているんですよ。」と教えてくれた。植物油の知識を深め、上手に生活を取り入れていくことは、ヘルスコンシャスなライフスタイルを実現するために、ますます重要となってくるはずだ。それ以上に、植物油に関する知識は、きっと食生活をこれまで以上に楽しくしてくれる。

文・長谷川あや、写真・中庭愉生
取材協力:一般社団法人 日本植物油協会

restaurant information

EPICURE(エピキュール)

住所:東京都港区元麻布2-1-17 モダンフォルム 1F
Tel:03-5422-7454
営業時間:ランチ11:30~15:00、ディナー17:30~23:00
定休日:月曜日
席数:15席
料金:昼6,050円〜、夜12,100円〜。テーラーメイドのコースは昼9,900円〜、夜14,300円〜