一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。

植物油サロン

食に経験や造詣が深い著名人、食に係わるプロフェッショナル、植物油業界関係者などの方々に、自らの経験や体験をベースに、
食事、食材、健康、栄養、そして植物油にまつわるさまざまな思い出や持論を自由に語っていただきます。

第23回 役者という仕事には終わりがない。だから進化を続けていくしかない 俳優 風間杜夫さん

IAST Mielke社代表のThomas Mielke(トーマス ミエルケ)さんにご登場いただきました。
ISTA Mielke社というより、オイルワールド社という方がなじみ深いかもしれません。

創業者である父は、世界の農業生産と貿易に関する情報発信をすることが夢でした

ISTA Mielke社は、父であるSiegfried Mielke(ジークフリート ミエルケ)が1958年に設立しました。
父の最初の構想は、世界の農業生産と農産物の貿易に関する総合情報を発信したいというものでした。会社の名称であるISTAとは、ドイツ語のInternationale Statistishe Agrainformationenの頭文字を並べたものですが、英語表現ではInternational Statistics of Trade and Agricultureという説明をしています。

農業や貿易に関する統計は、世界の多くの国が発表していますが、それらのすべてを拾い集め、総合化するという作業は大変困難なことです。現在のようにインターネットにより情報が簡単に入手できる時代であっても、世界の情報をすべてチェックし、総合化した統計を作成することは人員が豊富な大きい組織だけに限られるでしょう。まして、1958年当時では、誰もができる作業ではありませんでした。もし、情報を総合化した情報誌ができれば、きっと多くの人達に利用していただけるに違いないというのが父の発想の根源にありました。

しかし、ハンブルクの片隅にある小さな会社で、世界の農業と農産物貿易に関する統計を網羅することは実際には不可能でした。また、組織力を有するアメリカ農務省や国際食料・農業機関(FAO)と肩を並べる自信もありませんでした。このため、父は油脂に関する総合情報の発信に特化することを考えたようです。でも、自分が最初に描いた夢をせめて会社名に残したかったのでしょう。

オイルワールドの発刊第一号は1958年6月27日ですから、もう55年を経たことになります。読者の皆様に育てていただいたと考えています。私が本格的に仕事を引き継いだのは2002年ですが、父の最初の夢を大切にしようとする思いで、会社名は変更しませんでした。

油脂専門の情報誌に特化したことは、結果的に良かったと考えています。世界で唯一の油脂の総合情報誌として世界中の油脂関係者にご愛読いただいていることは、大変ありがたいことです。このように、日本からも取材いただくことに感謝しています。

日本の皆様とは因縁浅からぬ関係があります

実は、オイルワールド誌の定期購読申込みをいただいた最初の会社は、日本の商社(三菱商事)のハンブルク事務所でした。当時のハンブルクには日本の会社の事務所が多く設置されており、日本とハンブルクとの間には直行便が就航していました。子供心にも日本には関心を抱いていましたが、定期購読の第一号が日本の会社であることを知るようになり、私にとって日本は感謝とあこがれの国となりました。現在も、多くの日本の皆様にご愛読いただいていることは嬉しいことです。2007年に日本植物油協会からJOPAセミナーの講師に招かれたことは光栄であるとともに、長い間のあこがれが実現したことでもあり、飛び上がらんばかりに喜びました。その3年後にも再度招いていただきました。参加していただいた方が非常に多かったことと、たくさんの貴重な質問をいただきましたことが印象に残っています。

当社の50周年記念講演会を、2008年にハンブルクで開催しましたが、その時にもJOPA会員企業や事務局の方にご参加いただき、感謝しています。その時は父も大変喜んで、その方々に創業のころの思い出や、自分の当時の構想について懐かしそうに話していたことが印象的でした。

ただ、少し不思議に感じることがあります。当社にも日本の製油業関係の方が視察にお見えになります。15〜16人ぐらいの団体でお見えになるのですが、話をする方は1~2名で、後の方はメモを取っているというのが一般的で、日本でのセミナーで厳しくも的確な質問をくださる方々との落差に驚くことがあります。当社へ視察にお出でいただくのは大歓迎ですが、多くの方々にもっと気軽に発言していただき、意見交換ができることを期待しています。

それから、個人的感想で申し訳ないのですが、日本の鮨(ドイツ人らしく、ズシと発音)の味には感服しています。これまでの講演活動で、世界中の料理を食べてきましたが、鮨に勝るものはありませんね。ハンブルクの私の好きなレストランにも「Sashimi」というメニューがあり、私のお好みの一つです。これを注文するときは、ほかの料理もすべてお箸で食べます。我が家では、日本植物油協会からプレゼントしていただいたお箸を時々使用していますよ。

600人の情報協力者で支えられる情報発信

オイルワールドの情報発信は、世界各国で情報提供をお願いしている600人余りの協力者(Correspondents)に支えられています。彼らから送られてくる各国の情報が、オイルワールドの頭脳と称しているコンピューターに集積され、総合化された世界の情報として生まれ変わります。ISTA Mielke社は社員5〜6名の小企業ですが、その仕事が順調に進んでいるのは、この協力者の方々の支えがあってのことだと感謝しています。本当に多くの人々により支えられています。それだけに、正確で早い情報提供に努めることが私たちの使命だと考えています。

日本では、油糧輸出入協議会と水産油脂協会の方に協力者となっていただいております。いつも、報告期限をきちんと守って的確な情報をいただいていることに感謝しています。

少数の社員も、全力で働いてくれます。おかげさまで、私には多くの方々から講演の依頼があり、世界中を飛び回っていますので、代表者である私が会社の席に座っていることは少なく、彼らに全面的に依存しているのが実態です。

私が父に代わって本格的に講演活動を始めたのは2000年前後からですが、これまでに世界の各国・地域で350回以上の講演をこなしてきました。1年間に30回近く世界を飛び回るということは、日程が極めてハードであることを意味しています。日本のように、ハンブルクから最も遠い国で講演するときも、講演の前日の夜に到着、講演、そして翌日早朝にドイツへ帰るという2泊3日のスケジュールです。そして、ハンブルクに帰った翌日には、次の国へ向かうこともしばしばです。息子から、クレージーと言われたこともありますが、その息子も今年から私の仕事を手伝ってくれることとなり、ほっとしていますが、いつの日か、私が彼にクレージーという日が来るかもしれません。家族にも支えられているというのが本音です。

油脂専門情報発信会社として、更に充実した情報発信を考えていきます

現在、情報発信は多様になり、オイルワールドは年報(Annual)、月報(Monthly)、週報(weekly)とインターネットで日報(Flash)の提供をしています。世界で100を超える国・地域の皆様に、これら情報の定期購読をしていただいています。無論、日本の皆様にも、ご利用いただいておりますことに、改めて御礼を申し上げます。
2013年版の年報は、今日(6月1日)、脱稿し印刷・製本を始めました。ご予約いただいた方には、間もなくお届けすることができます。
脚注:本稿掲載時点では、既に日本にも届いています。

油脂に特化した専門情報発信を仕事としてきたことを、本当に良かったと思っています。何を考えるにも、先ず統計数値が必要になります。そして、そのなかから何かが見えてくるのです。講演活動をしているといっても、私は油脂の専門家ではありません。中立(independent)で信頼性が高い情報発信をするとの立場を貫くため、他の一切のビジネスに手を染めてもいません。しかし、自分たちで集めた数値を見ていると、いろんなことが見えてきます。製油企業の皆様など油脂の専門家には、私以上に数値の意味が重く見えるのではないでしょうか。

ただ、情報発信技術が日に日に高度化してきますので、更に皆様にご利用の利便性が高い情報発信に努めるのが私どもの責務です。そのためにも、日本の皆様から、このような情報が、このような形式でほしいというようなご意見をいただけることが何よりもうれしいことです。このインタビューを機会に、皆様から多くの意見を寄せていただくことをお願い申し上げます。
私どものウェブサイト(www.oilworld.de)へのご訪問をお待ちしています。

インタビュー後記

Thomas Mielke氏は、今年の1月に最愛の奥様Kristinさんを亡くされました。
看病のため、この1年間は講演活動を自粛されていましたが、今年から活動を復活されました。
氏のご自宅兼社屋は、一見、日本家屋に見える建物で、ここにも日本への関心の深いことが窺えます。

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