一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。

植物油の道

5.油糧種子と植物油の国際価格

 世界の油糧種子と植物油の価格は、基本的には国際的な需給関係によって決まります。しかし、全ての商品が取引される巨大な市場が存在するわけではなく、実際の需給だけではなく市場参加者の需給を巡る思惑が価格形成に大きく影響しています。また、世界の投機資金が、ある時は農産物市場に流れ、ある時は引き揚げるという不規則な動きも価格形成に影響します。

 世界的に権威のある商品取引所は物品によって異なりますが、油糧種子の場合はシカゴ商品取引所(Chicago Board of Trade:CBOT)が最も影響力のある取引所となっています。CBOTでは、大豆、大豆油及び大豆ミール(大豆3品と総称することがあります。)が同時に上場され、それぞれの先物価格が形成されます。取引所での価格は、次の様な要因によって決定されると考えられます。

① 需給に関する売り手と買い手の思惑の均衡点。
② 他の農産物との関連。大豆の生産地域は、小麦、とうもろこしの生産地でもあり、それらの価格と連動して動くことが一般的。
③ 大豆以外の油糧種子や植物油の動向。
④ 投機資金の動き。金融市場が不調な時期等には、この影響が高まります。
⑤ 石油製品価格との連動。バイオ燃料の登場に伴い、この様な要素も加わっています。

 基本となる需給については、刻々の情報が影響を及ぼします。需給に影響を及ぼす情報は、需要面では主要輸入国の買い付けの意向、供給面では油糧種子の播種動向、発芽と初期生育、生育から収穫に影響を及ぼす気象条件、収穫面積の情報、収穫量に関する情報等があります。初期生育から成長期にいたる天候により価格形成が大きく振れることがあり、天候相場と称されることがあります。アメリカ農務省(USDA)が毎月公表するレポートが市況に大きな影響力を持っています。
2012年に大豆の主要生産地域である南米とアメリカが大干ばつに見舞われ、需給のひっ迫感が高まったことからCBOTの大豆価格は同年9月には史上最高値を記録しました。2021~2022年にかけても、食用やバイオ燃料による需要増に加え、2021年産カナダ菜種の不作、新型コロナ禍による労働者不足によるパーム油減産、2022年のウクライナ情勢等による油糧種子及び植物油の需給逼迫感から同年前半にかけて高騰となった後、同年後半に低下に転じ、2023年も低下傾向が続く落着きを見せていますが、2020年以前との比較では、なお高位で推移しています。

 CBOTにおける大豆3品の内、大豆の価格を図14に示しました。過去から今日まで、先に述べました要因により価格は激しく変動してきました。これまでの価格の動きをみると、2000年代初めまでは価格が一時的に上昇しても、また、元の水準に戻るという現象が見られました。しかし、2000年代になってからは、高騰した後に価格が元の水準に戻ることなく、価格が段階的に上昇し、高水準で推移しています。CBOTは、基本的には需給動向によって商品の価格が決まることを原則として動いていますが、一方では、生産農家のコスト上昇を価格にどう反映するかという課題があります。2000年代になって高騰の後に価格が元の水準に戻らないのは、農家の生産コスト上昇が下支えの圧力になっているという見方もできるようです。

 CBOTで形成された価格は、菜種等他の油糧種子の価格、パーム油の価格等に影響を及ぼします。その意味で、CBOTの大豆3品価格は、他の油糧種子や植物油の価格形成の基礎になっているとも言えるものです。
 また、形成された3品の価格はそれぞれの需給要因を基本に形成されることから、1ブッシェルの大豆を搾油し、大豆油と大豆ミールとして販売すると、どれだけの粗利益が得られるかが理論上計算でき、大豆油と大豆ミールの販売額の対比が可能になります。前者をボードマージン、後者の大豆油と大豆ミールの相対関係をオイルバリュー、ミールバリューと称し、その時々の搾油の収益性や市場条件を判断する一つの目安となっています。

図14 CBOTにおける大豆価格の推移

(単位:ブッシェル当たりセント)

(単位:ブッシェル当たりセント)

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資料:シカゴ商品取引所

注:各限月決済日の価格(終値)である。

資料:シカゴ商品取引所

注:各限月決済日の価格(終値)である。

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