一般社団法人 日本植物油協会 社団法人日本植物油協会は、日本で植物油を生産している企業で構成している非営利の業界団体です。

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練の技に学ぶ、植物油の生かし方 職人の知恵袋

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「植物油っていろいろあるけれど、使い方がもう一つ分からなくって・・・。」
「あのお店の天ぷらは美味しいけど、家庭であの味を出すのは無理よね・・・。」
「油をもっと上手に使うコツってあるのかしら・・・。」どなたでも、こんな疑問をお持ちではないでしょうか?
確かに、油の使い方は調理方法や素材によって千差万別。お料理の本でも丁寧に解説しているものは少ないように思います。
このコーナーでは、「和・洋・中」の料理の達人に「植物油の上手な使い方、生かし方」をお聞きし、皆様の疑問やお悩みにお答えいたします。
食通をうならせる熟練の技を持つ達人たちの「逸品」。その隠された創意工夫の一端を知るだけで、いつもの料理が得意料理に変身するかもしれません。
そして、変身したお味にご家族のみなさんも大満足!さあ!達人の知恵を知り、四季を通じて「植物油を生かした美味しい料理」をお楽しみ下さい。

第十五回 植物の実力に癒される野菜カレー
大地の恵みを生かした奥深い味わいの“家庭料理”
「インドはもともとベジタリアンが多いので、スパイスを巧みに使いこなした美味しい野菜料理がたくさんあるんです」と語る、料理長のサダナンダさん。

日本初の自然派インド料理店として誕生して以来、約20年以上前から菜食主義を貫いている『ナタラジ』は、動物性の素材を一切使わない老舗店。チキンやマトンの文字はメニューには見当たりません。しかしながらインドの伝承医学“アーユルヴェーダ”の考え方をベースに、豆や野菜などの植物性の素材と30種類以上のスパイスを駆使した料理の数々は、肉や魚を使っていなくとも満足度の高いものばかりです。

「オープン当時のメニューは、サモサといったインドの珍しいスナック類とチャパティ、そしてカレーはベジタブルと豆のカレーの二種類だけでした。今から約20年前ですから、肉が入っていないなんてカレーじゃないと考えている人がほとんどで、日本で菜食だけのインド料理をやるなんて絶対無理に決まっている、と周りからもさんざん言われたと聞いています・・・(笑)」

と語っていただいたのは、料理長のサダナンダさん。まず初めにご提供いただいた「野菜カレー」は、ジャガイモ、人参、カリフラワー、長ナス、サヤインゲンなど、色々な野菜がゴロゴロと入ったボリューム感のある一品。これらはお店の農園スタッフが手をかけて育てた有機無農薬野菜で、山梨と蓼科、そして南房総にある自家農園から季節の野菜を直送。カレーの主役である野菜は、これら大地の恵みを生かして調理され、あたかも一般のご家庭の奥様が作るような優しい口当たりでありながら、それでいてスパイスがあとから追いかけてくる、非常に奥深いものです。

たっぷりのオリーブオイルで和えるサボテンのサラダ

「このカレーの美味しさの秘訣は、野菜の歯ごたえを適度に残す程度に煮込むことにあるのですが、もうひとつの大きなポイントは、スパイスの炒め方にあります。お鍋に菜種油を中火で熱し、クミンシードやクローブといったスパイス類を香り立つまで炒めるのですが、スパイスがパチパチと音を立て始める瞬間を逃すことなく、菜種油とスパイスが溶け合うタイミングでひとつにまとめ上げることを意識することが大切です。言葉では簡単でも実際は難しいかも知れませんが・・・。火力が強すぎるとスパイスが焦げて美味しくなくなります。スパイスによっても炒める温度は異なりますが、つねにスパイスが焦げないように、色んな野菜を火の通りやすさを考慮しながら順に投入して、お鍋の温度を落ち着かせることも考慮しながら作っているんです」

菜種油でスパイスを炒めると、スパイスの味の香りが油に移って、後から加える野菜に味が均一に行き渡り、全体の味がまとまりやすくなるとのこと。菜種油はインドではごくポピュラーに使用されている植物油で、酸化しにくい特性があることに加え、菜種油自体の香りが濃厚ではなく、スパイスの香りを邪魔することがないことが菜種油が使用されているとのこと。

「ナタラジは五つ星ホテルの“よそ行き”の料理ではなくて、たとえ豪華に見えても基本は“家庭料理”を意識しているんです。ホテルの食事はいつも食べていたら飽きてしまう、でも “家庭料理”は誰もが心からほっとして、じんわりと温かくなり何度も食べたくなる。ナタラジが目指すのは、そんな料理なのです」

野菜のうま味を菜種油で閉じ込めるスープカレー
日本における味噌汁のように「いま自分は身体にいいものを採っているな」と実感できる『ダル』という名のスープカレー。

ここ『ナタラジ』がオープン以来、ずっと変わらないコンセプトとして掲げているのは、“身体がよろこび、食べたあとに心地良さが残る料理。心も身体も満足する、ヘルシーな野菜料理”とのこと。続いてご提供いただいた「ダル」(※ダルとは、皮を取って挽き割りしたレンズ豆)という名のスープカレーは、まさにそのコンセプトを象徴する一品となっています。

「日本で言えばお味噌汁のような感覚で食べることのできる、お豆と水、そして菜種油と野菜が身体の中にスーッと入り込むような、身体にいいものを食べていることを実感できるスープカレーです。良質なたんぱく質を豊富に採ることができ、ベジタリアンにも人気のあるレシピのひとつです。ナタラジでは豆の臭みがでないように、上手に香辛料を合わせて美味しくなるように工夫しています」

「ダル」を水と塩で茹で、そこへ熱した油で香りを出したクミンシード、ニンニク、玉ネギ、トマトなどを油ごと加えて軽く混ぜ合わせれば出来上がり。どんなダルにしたいかは、菜種油の分量や質が決めると言っても過言ではない料理とのこと。

「こってり系がお好みの方は菜種油を多めにして水を少なめにしたり、よりスープっぽくしゃぶしゃぶ風にしたりするのも、菜種油の分量で調節が可能です。私どものレシピでは、4人分のレシピに菜種油は30mlを目安におすすめしています。あまり菜種油の分量が少ないと、ダルそのものにコクが無くなってしまい、コクのあるクリーミィな味わいが半減してしまいますからね。菜種油はスパイス類の香りを引き立たせながら、それでいて適度なコクを持っているのでベストな植物油なんです」

インド料理にもかかわらずヘビーな感じがなく、味わいはしっかりと感じるのに、たくさん食べても胃もたれすることもありません。料理によって使用するスパイスの調合を変えることで、食材となる野菜の持ち味をさらに引き出していきます。

「これまでもそうですが、これからもカレーには肉や魚が不可欠という固定観念を打ち破って、野菜だけでも十分に栄養バランスが取れて満足感があることを伝えていきたいんです。ご家庭でカレーを作る際には、野菜を炒める時にすぐにお水を入れてしまいがちですが、植物油を野菜に十分に馴染ませてから、それからお水を入れるように心がけて欲しいですね」

インド料理とは火加減や具を入れるタイミングが重要な“調和”の料理

最後にご提供いただいた「野菜パコラ」は、お好みの野菜で作るインド風の野菜の天ぷら。スパイスを混ぜ合せた豆粉の衣は、卵を入れていなくてもふんわりサクサクに仕上がっています。お豆の粉自体にも味や香りやうま味があり、ホールトマトにスパイスを効かせた爽やかな酸味の「トマトチャツネ」をつけて食すのが、このお店ならではのこだわりです。

「揚げる野菜は、カリフラワー、ナス、シシトウ、サヤインゲンがベースとなります。日本ではカボチャやサツマイモなども天ぷらにしますが、インドではあまり甘いものを天ぷらにする習慣か無いんです。フライパンで入れて熱する際の菜種油の温度は170℃位が目安になります。私は“ゴールデン・ブラウン”と呼んでいるのですが、豆粉をまんべんなくまぶした衣が“きつね色”になることを目安に揚げることが美味しさの秘訣になります」

インドの人々は本当に揚げ物が大好きで、屋台にも揚げ物のお店が軒を連ねているとのこと。夏はズッキーニなどを揚げることもあるそうです。

「色んな野菜を高温の植物油でコーティングをすると言いますか、野菜のうま味を閉じ込めるために植物油が果たす役割は大きいと思います。いわゆるベジタリアンの人にとっても、スパイスと植物油が加わることによって、味わいはより深いものになりますから。また身体に良いと言われているオレイン酸は、一般的に揚げ物用として使われる油の中では、菜種油が最も多く含まれていますしね」

ナタラジでは一品一品スパイスの調合を変えて料理を作っています。血をきれいにしたり、胃腸の調子を整えたり、身体を温めたりするなど、インドのスパイスは自然の知恵に溢れています。一般のご家庭ではなかなか出来ることではありませんが、そこに菜種油を組み合わせることで、軽くもなく、かといって重すぎることもないカレーや揚げ物などのレシピが生まれているのです。

「インド料理で大事なのは、一言で表現すれば『調和』です。素材を焦がさないように強弱をつけた火加減、スパイスや具を入れるタイミングなど、すべてが絶妙なバランスの中で調和する時に、最高の料理が生まれるんです。どちらかと言えば、日本のカレーはルーの味で決まるような認識がありますが、一般のご家庭でも、野菜ひとつひとつの素材本来の味わいを舌で転がしながら楽しめるようなカレーを目指して欲しいですね」

『自然派インド料理 ナタラジ』 お店紹介

「インドの菜食文化を日本にも紹介したい」との思いから、1989年に1号店を東京・高田馬場にオープン。以後、菜食インド料理の草分けとして、東京に3店舗、長野(蓼科)、大阪に支店を開く。山梨と蓼科、南房総にある自家農園から季節の野菜を直送。約20種のカレーはもちろんのこと、天然酵母を時間をかけて発酵させた「炭火焼きナン」も好評。インドの民族舞踊のライブ(不定期)も楽しむことができる。

東京都中央区銀座6−9−4 銀座小坂ビル7~9F
電話番号:03−5537−1515
http://www.nataraj.co.jp/