ごま油のお話し ― 香り豊かな食生活、そして、急変する国際市場 ―

2.ごま油は、“植物油の貴婦人?“

 “ごま油"というと、焦げ茶の色をした小瓶の油を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、それだけではなく、普通のサラダ油と同様に無色透明のごまサラダ油も作られています。

 おなじみの焦げ茶のごま油は、焙煎したごまを圧搾して得られるもので、焙煎によって独特の香りと色を持つようになります。これに対し、ごまサラダ油は、焙煎しないごまを圧搾・抽出して得られた粗油を、大豆油や菜種油と同様に精製して作られます。利用の方法は、他の植物油と同じです。

 私どもが実施したアンケートでは、家庭に常備されている植物油の筆頭がごま油でした。皆様に最も愛用されている植物油と言っても過言ではないようです。無論、このごま油は焦げ茶の色をした焙煎ごま油を指しています。

 ごま油は、和食、中華、韓国料理など東アジアの国々の調理に不可欠の油となっています。植物油Information第57号でオリーブ油を“植物油の貴公子"と例えました。オリーブ油を西側世界(ヨーロッパ)を代表する植物油と例えれば、ごま油は東側世界(アジア)を代表する“植物油の貴婦人"と例えることができるのではないでしょうか。実際、オリーブ油とごま油には幾つかの共通点があります。

【1】 植物油がもともと有している香りを愉しむ油であること。
多くの植物油は、独特の香りを取り除かないと食用に適した油にはならないのですが、ごま油とオリーブ油は、その香りを生かすことに特徴があります。この点では、落花生油などナッツ系の油もその仲間になります。
【2】精製をしない油であること。
焙煎したごま油は、粗油を濾過して不純物を除去するだけで、精製は行いません。このことによって馥郁たる香りが得られるのです。ごま油もオリーブ油も容器の底におりがたまることがありますが、精製をしていない油の特徴です。
【3】 高価な油であること。
高価であることを特徴としていいのかどうか疑問ですが、生産量が多くなく、どうしても価格が高くならざるをえないのもオリーブ油と共通しています。

 “植物油の貴婦人"は私どもの勝手な命名ですが、ごまの種子そのものも豊かな栄養を含み、食卓に欠くことのできない食材であることから、ごまを“油糧種子の女王"と呼ぶことがあるそうです(油脂・油糧ハンドブックより)。

 香りと並ぶごま油の特徴は、酸化に対する安定性が高いことにあります。普通、大豆油や菜種油などの植物油にはトコフェロールという自然の抗酸化物質が含まれ、これが植物油の酸化の進行を抑制するはたらきをしていますが、ごま油に特有に含まれるセサモールは更に高い抗酸化作用を有しています。焙煎ごま油の賞味期限が他の植物油より長く設定されているのはこのためです。

ところで、精製をするごまサラダ油も最近ではひそかな人気を集めています。焙煎ごま油とは異なり、香りも、コクも強くないのですが、サラダや揚げ物に用いると、強烈な自己主張はしませんが、ほのかな香りと風味が漂います。一度お試しいただき、焙煎ごま油と同様に、食卓の必需品にしていただくことを願っています。

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