カナダ菜種協会が野心的な菜種生産拡大計画を策定
4. 野心的な生産拡大計画

 カナダ菜種協会(Canola Council of Canada)は、2007年3月にビクトリア市で開催された年次総会で、2015年を目標年次とし、菜種生産を飛躍的に拡大させようという野心的な計画を承認しました。

 この背景には、これまで述べてきたように油糧種子市場が拡大し、菜種に対する需要が増加していることがありますが、更に、カナダの菜種関係者を鼓舞している事実があります。それは、北米地区自由貿易地域(NAFTA)を形成しているアメリカで菜種油需要が拡大することに対する期待です。


“ヘルシー・カノーラ油”の熱気

 アメリカ政府のFDA(食品医薬局)は、菜種油が健康の増進に寄与する食品であるとの強調表示(ヘルスクレーム)を認めました。FDAが強調表示を認めた背景には、アメリカの一般的な食生活が、飽和脂肪酸を過剰に摂取しがちで、水素添加大豆油の利用によるトランス脂肪酸の摂取機会が多いものとなっている事実があり、強調表示の実施はこのような食生活を改善したいというアメリカ政府の期待を込めたものと理解するべきでしょう。

 モノ不飽和脂肪酸(主としてオレイン酸)を多く含む菜種油が優れた食品であることは言うまでもありませんが、食生活と食用油の摂取が異なる日本において、菜種油に人体の健康増進機能を強調表示できるほどの評価は与えられてはいませんし、今後もそのようなことにはならないと見込まれます。

 しかし、アメリカと国境を接し、食生活にも共通点のあるカナダにおいて、この措置は菜種関係者には福音にも似た響きを与えるものとなりました。“健康”をテーマに、菜種油の市場拡大を図る可能性が開かれたことになるからです。実際、カナダの菜種関係者は、菜種油が健康増進に寄与する植物油であることに疑いを有していません。この年次大会においても、会議の開始時や昼食時に、アメリカのニュースやワイドショーで放映された、“ヘルシー・カノーラ油”のスポットを繰り返し、参加者の熱気を煽る光景が見られました。


野心的な菜種生産拡大計画

 それでは、CCC年次大会で採択された菜種生産拡大計画(Growing Great 2015)は、どのようなものであったのでしょうか。その概略は、表1に示すとおりです。

 菜種生産の最終目標(2015年)は1,500万トンで、2006年産に比べて約65%の増加をもくろんでいます。その達成のため、菜種作付面積を30%拡大し、品種改良などにより1エーカー当たりの収量を35%上昇させることを描いています。

 また、機能性を付与した新品種(脂肪酸構成を変換させた品種、ハイブリッドなど高収量品種等。カナダでは、デザイナー品種と称している)の作付の拡大を図りたいとしています。

 輸出量については、現状の約50%増加を見込み、日本は安定した市場、EUやアメリカは拡大を期待できる市場と位置づけています。しかし、最も注目するべきことは、カナダ国内での圧搾量を倍増しようという計画です。バイオディーゼル需要の増加により、国内の圧搾能力が飛躍的に拡大するという見込みに基づいており、年次大会の講演者として参加した製油企業のトップは、大幅な設備の拡大を高らかに語っていました。


計画実現の可能性

 “野心的に過ぎるのではないか?”と実効性を懸念する疑問もありますが、CCCは達成可能な計画であるとの見解を示しています。無論、作付面積に関しては他の作物との競合があり、相対的な価格関係によって揺れ動きます。しかし、堅調な需要を前提に、今後も菜種にとって有利な価格が形成されるという強気の予測が行われています。そして、強い市場支配力によって、高価格を維持することも不可能ではありません。

 収量を30%も高める品種改良も困難な課題です。遺伝子組換技術の進展は計算済みであっても、実際の農場において技術の平準化が進むためには、農家指導の強化が必要になりますが、CCCに勤務する農業指導者(アグロノミスト)達は、十分な自信を有しているようです。

 こうしてみると、不安定要素は人為の及ばない天候異変だけかもしれません。

 需要者としては、カナダの菜種生産が拡大し、安定することは好ましいことであり、計画実現へ向けたCCCの一層の努力に期待しています。


【 表1 カナダの2015年菜種生産拡大計画 " Growing Great 2015 " 】

表1 カナダの2015年菜種生産拡大計画 " Growing Great 2015 "  
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