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7 騰勢続く海上輸送費

  私たち製油産業にとって、油糧種子価格の高騰に加えて穀物・油糧種子の海上輸送費が上昇していることも大きな問題です。これらは、すべて製油産業の原料調達コストの大幅な上昇をもたらしています。
 穀物、大豆などのバルク商品の海上輸送費も、これを運搬する船腹の需給によって変動します。大豆をアメリカから日本へ運送する海上輸送費は、過去15年の間、大豆1トン当たり13米ドルから35米ドルの範囲で変動してきました。しかし、昨年秋に40ドルを超えて以来急速に上昇し、本年2月からは70ドルを超す水準に達しました。大量輸送で本来効率的なはずのバルク輸送よりコンテナなど少量輸送費の方が割安という奇妙な現象さえ生じているのです(図5参照)。
 海上輸送費の高騰には、大豆の貿易量が急増したことも一役買っているのかもしれませんが、主な要因は、2008年の北京オリンピック、2009年の上海万博を控え、その準備のため中国で鉄鋼などの資材を運搬する船腹の需要が増加していることにあります。運搬船の建造には膨大な費用と長期の時間を要します。また、一時的な需要が過ぎた後のことを考えると、船を必要以上に建造することもできない事情にあります。このような事情から、穀物や大豆と鉄鋼など資材の間で運搬船確保を巡る競合が生じ、船腹の需給が一時的に逼迫度を強めています。


グラフ


8 植物油やミール価格への影響

 油糧種子価格の高騰、海上輸送費の上昇は、私たち製油企業の原料取得コストを押し上げます。植物油は、油糧種子からの第1次生産物ですから付加価値が相対的に小さく、原料取得費の上昇がそのまま大豆油の製造コストの上昇をもたらします。

 いささか乱暴な計算をしてみましょう。
 大豆1ブッシェルからおよそ5kgの大豆油が生産されます。シカゴ商品取引所の大豆価格が昨年の今頃に比べ5米ドル上昇していますので、これに平行して大豆油の製造コストは1kg当たり1米ドル(約106円)上昇することとなります。
 同様に、大豆1トンからおよそ180kgの大豆油が生産されますから、50ドルの海上輸送費の上昇は、大豆油1kg当たり製造コストを25セント(約27円)押し上げます。
 無論、大豆ミールの価格が大豆と平行して上昇していることや、企業の合理化努力によって製油コスト上昇の一部が吸収されますが、そのすべてが解消されることは不可能です。
 いま、植物油の価格が上昇しています。私たちにとりまして、お客様にご負担の増加をお願いすることは大変心苦しいことと認識いたしておりますが、このような事情についてご理解を賜りますことをお願い申し上げます。

 私たちの植物油製造業にとどまらず、日本の食品産業は原料の多くを海外に依存しています。米や小麦のように政府が国際価格の変動を吸収している商品もありますが、自由な取引を行っている商品につきましては、海外の価格変動を国内の製品価格に連動させることが、食品産業の存続のため不可欠な要件であると考えます。もし、そのような構造がなければ、日本の食品産業、特に私たちのように海外から直接原料を調達し、基礎素材を供給している産業が、海外資本に取って代わられるという問題を生じかねません。食品の安全と安心という重要な課題のためにも、植物油は私たちが皆様へ供給し続けたいと願っております。

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