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-植物油の美味しさ大発見-

それは植物油の魔法!vol.1 【綿実油】
お土産のおまんじゅうが一瞬で魅力的なスイーツに変身!
@PANZEROTTERIA / パンツェロッテリア(東京・松濤)

Vol.1お土産のおまんじゅうが一瞬で魅力的なスイーツに変身!

このところ、スーパーには様々に個性的な植物油が並ぶようになりました。ちょっとおしゃれなスーパーに行けば、見たことも聞いたこともなかったような、植物油との出会いを果たすこともあります。なんだか気になる! でもこの植物油はどんな風に使えばいいの? ということも多いはず。そこで、この短期連載では、日々、植物油を使っている達人を突撃! 達人のお店とオススメ料理を紹介するとともに、家庭で料理する際のアドバイス等を伺います。

イタリアの揚げピッツァ「パンツェロッティ」をご存じですか?

記念すべき、第1回は、渋谷・松濤の「PANZEROTTERIA / パンツェロッテリア」を訪ねました。店名にもあるように「パンツェロッティ」をテーマにしたイタリア料理店です。

パンツェロッティとは、イタリア発祥の「揚げピッツァ」のこと。ですが、パンツェロッテリアでは、あえて「包み揚げ料理」と呼んでいます。「カルツォーネ」と似たルックスですが、カルツォーネは窯で焼き上げるのに対し、パンツェロッティは油で揚げるという点で大きく異なります。イタリアでは片手でいただくファストフードとして親しまれているパンツェロッティですが、同店では、きちんとテーブルに着席して頂く一つの料理として提供しているのも特徴のひとつです。

海外で25年間を過ごし、帰国後お店の立ち上げを決意

「PANZEROTTERIA / パンツェロッテリア」のオーナーは、西正博さん。アパレルの仕事の関係で、ミラノやニューヨークで、約25年間を過ごした西さんは、2012年4月、帰国のタイミングで、日本で、パンツェロッティを主役に据えた店を立ち上げることを決意します。

伸ばした生地に具材を包み、窯で焼くのではなく、油で揚げるパンツェロッティは、イタリアの南部のプーリャ地方やナポリが発祥の地であるという説が有力です。本場イタリアでは、具材はトマトとチーズのみのマルゲリータのことが多いそうですが、同店では、常時約40種類のパンツェロッティを用意。「季節の食材を使ったり、お客様のリクエストに応えていたりしたら、どんどん増えていってしまったんですよ(笑)。その分、味のバリエーションは豊富です」。メニューの1ページがぎっしり、パンツェロッティのメニューで埋め尽くされていました。そんな西さんがこだわるのが、そう、今回のテーマである油です。

達人の推し油は「綿実油」

今回の達人の推しは、綿の実から採取できる「綿実油(めんじつゆ)」です。パンツェロッティの店を立ち上げることを決めた西さんは、さまざまな油を使い、試作を行いました。そんな中、「なかなかピンと来る油に出会えなかったのですが、綿実油はしっくりきました。いい意味で、油のしつこさがないんです」。そこで、綿実油について調べたところ、とある国産メーカーにたどりつきます。

「調理に使う油は、すべてその国産メーカーの綿実油です。仕上げにエクストラバージンオリーブオイルを使うこともありますが、火を入れるものは混じりっけのない綿実油です。天ぷら屋の場合は、ごま油など他の油と混ぜることが多いと聞きますが、うちは、他の油とは混ぜていません。自宅でも基本的には綿実油を使っています。塩や胡椒と同じように、この油があることが、メニューを考える上でのベースとなっています」

そんな綿実油の伝道師とも言うべき西さんが教えてくれたのは、「揚げまんじゅう」でした。コレ、自宅でとても簡単にできるんです。

【材料】
お土産のおまんじゅう‥‥‥‥適量
綿実油‥‥‥‥適量

1) たっぷりの綿実油を180℃に熱する。

2) おまんじゅうを入れる。

3) 表面がきつね色になったら出来上がり。おまんじゅうの大きさ等によって所要時間は異なる。

「そうです、ただ揚げるだけです(笑)。お土産をいただいても、最後まで食べきれずに飽きてしまうことってありませんか。そんな時は、揚げてしまえばいいんです。お土産の味が美味しいお菓子に変わります」

えー、といってもおまんじゅうはおまんじゅうじゃないの! と大して期待せずにいただいた揚げたてのおまんじゅうの美味しいこと! 他のいろいろなお土産ものでも試してみたくなりますね(笑)。

「まんじゅう以外の土産ものでも応用できますが、パンツェロッティやまんじゅうのように具材が包まれているものがいいと思います。中身が出てしまうと、油も汚れてしまいますしね」

“揚げる”というより、“蒸す”感覚

では、お店のメニューを2つばかりご紹介しましょう。まずはなんといっても、パンツェロッティでしょう。約40種ものバリエーションのなかから、西さんにピックアップしてもらったのは、「チキンと野菜のイチジクソース」(1,150円)でした。

注文が入ると、2種の小麦粉をブレンドして作った生地を伸ばし、具材を入れて半月状に包みます。包んだ具材が出ないように、しっかりと包むことが大切なのだとか。これを、180℃に熱した綿実油の中に、4分30秒から5分ほど入れ、生地が膨らみ、きつね色になったら完成です。外側のサクッとした歯触りと、中のモチッとした食感は、油で揚げているパンツェロッティならでは。48時間煮詰めて作った、甘じょっぱいイチジクソースとチキンの相性も抜群です。揚げものってやっぱり美味しい! と再認識。これまであまり意識したことのなかった、綿実油の底知れぬその実力にビックリ! 感動ものです。

「生地で具材を包み、油で揚げると中が蒸したような状態になるんです。自分のなかでは、パンツェロッティは“揚げる”というより、“蒸す”感覚で調理しています」

揚げずにソテーする、“やさしい”クラブケーキ

パンツェロッティ以外のメニューも充実しています。熟成ハム盛り合わせと一緒に出てくる、ピッツァ生地を揚げた「ニョッコフリット」も予想の上をいく美味しさでした。これだけで、白ワインが1本飲めそうです。イタリアやフランスから直輸入する旬の食材を惜しみなく使って作るメニューも、どれもこれも魅力的です。「パンツェロッティを食べず、季節のメニューをワインとともに楽しまれる方も多いですよ」と西さん。たしかに、季節のメニューは、モンサンミッシェル産ムール貝の自家製ジェノベーゼソース和えや蝦夷鹿、フランス産のうさぎを使った料理など、気になるもので溢れています。そんななか、お次のメニュー、「ズワイガニのクラブケーキ自家製サワーソース和え」(1,500円)が運ばれてきましたよ。

「ニューヨークに住んでいた時に、好きだった料理です。ボルチモア周辺が発祥と言われている料理で、ヨーロッパではまず見かけません。正直、自分が食べたいものを作っているというところはありますね(笑)」

「ズワイガニのクラブケーキ自家製サワーソース和え」は、あえてベシャメルソース(バターと小麦粉、牛乳から作る白いソース。グラタン、コロッケなどに使われることが多い)を使わず、ほんの少しの牛乳でシンプルに仕上げています。ズワイガニとフランス製のバター、タマネギと牛乳を使ったクラブケーキを、「揚げるとコロッケになってしまうので(笑)」と、綿実油で丁寧にソテーしています。西さんが言うように、「やさしい」味わいです。付け合わせの野菜も色彩豊か。仕上げには、シチリア産のオーガニックオリーブオイルをかけて風味を高めています。

綿実油は、揚げ物がサクサクに仕上がる

では、最後に改めて、綿実油の推しポイントについて聞いてみました。

「綿実油、とくに国産の上質な綿実油は、ビタミンEを多く含んでいると聞いています。だからでしょうか、綿実油で揚げた揚げものは、胃もたれしないんですよ。綿の実から搾る油は風味が高く、油のどろっとした感じがないんです。焼いたもののようにサクサクと仕上がるのもいいですね。綿実油で揚げる鳥の唐揚げも美味しいですよ」

なお、パンツェロッテリアのパンツェロッティは通販でも購入可能。そして、愛犬もウェルカムです! 西さんの飼い犬で、同店の看板犬のベアトリーチェが、出迎えてくれることでしょう。

■パンツェロッテリア / PANZEROTTERIA
住所:東京都渋谷区松濤2-14-12 シャンボール松濤105
Tel .:080-2675-7216
営業時間:平日 18:00~23:00(L.O.22:00)
定休日:月曜、火曜。ただし、祭日の前日は営業
https://www.panzerotteria.com/

取材・文/長谷川あや 撮影/中庭愉生
取材協力/一般社団法人 日本植物油協会