新たな段階を迎えた植物油の国際需給
3.主な油種は需給逼迫が継続

 ここまで、大豆を中心に需給を巡る動向を述べてきましたが、両氏による大豆を含めた主な油種の需給展望を紹介しましょう。

(1)大豆:基調はタイトな需給

 Mielke氏は、2010/11年における世界の大豆需給を表6のとおり予測しました。
 これまで見てきた指標をとりまとめたものですが、2010/11年には単年度の生産と消費が均衡する(在庫は変わらない)との前提に立っています。搾油が前年より大幅に増加すると見込まれる中で、前述の南米の生産次第で需給事情が大きく変わることを示唆しています。


【 表6 世界の大豆需給予測(2010/11年) 】

(単位:百万トン)
  2006/07 2007/08 2008/09 2009/10 2010/11
(予測)
期首在庫 59.3 71.5 59.6 45.3 67.0
生産量 237.6 220.5 211.3 260.7 258.5
 北半球 121.4 104.8 114.7 125.0 128.3
 うち、アメリカ 87.0 72.9 80.8 91.4 92.8
 南半球 116.2 115.7 96.6 135.7 130.3
 うち、アルゼンチン 48.3 46.2 31.5 54.7 52.0
 うち、ブラジル 58.7 60.0 57.2 68.7 66.5
搾油 196.1 203.0 196.0 207.3 226.0
その他の用途 29.4 29.3 29.6 31.8 32.5
期末在庫 71.5 59.6 45.3 37.0 67.0
資料・注:表5に同じ

 Mistry氏の予測もほぼ同様の見解に立っておられますが、アメリカのBDFの動向次第で波乱があるとの見方を示されました。アメリカでは、本年、バイオ燃料に関しRFS2 (Renewable Fuels Standard 2。再生産可能な燃料に関する基準2)が定められました。この中では、BDFを進展させるとともに、新たに、植物繊維など新しいバイオ燃料についての基準が定められました。これが、どの程度実行に移されるのかが、大豆の需給にも影響を及ぼすというものです。
 もう一つは、アルゼンチンの大豆とその製品に賦課される高額の輸出税に対する同国政府の対応によっても、変化が生じることを警告されました。アルゼンチンでは、大豆輸出に対し35%の高額の課税が行われています。大豆を輸出産業として育成し、政府の税収増加を期待することを背景に設定されたものと理解できます。2008年、政府はその引き上げを目論みましたが、生産農家による大豆出荷拒否や道路封鎖などの大規模な反対運動に直面し、僅差で議会の承認を得ることができなかったことは記憶に新しいところです。論理的には、同国の大豆価格が国際価格より輸出税の分だけ安く抑えられることになるため、生産農家にとっては不利な制度であるとの認識があります。したがって、生産農家は大豆の手取り価格の上昇を求めて、輸出税を徐々に引き下げることを要求しています。これが実現すれば、生産農家は保有している大豆を市場に販売することとなり、逼迫した需給が一時的に改善するかもしれないというのですが、その効果も短期に終わるだろうと述べています。

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