いつまでも元気は、適正な食生活と運動から
2.食生活の変化からなる長寿と食事の関係

●多様な食品摂取が生活機能障害リスクを低減

  国民健康栄養調査成績によれば、70歳以上高齢者の魚介類と肉類の摂取重量比は約2.3:1の割合で、全年齢階級の総平均では1.2:1の割合となっています。また、総摂取エネルギーに占める脂質エネルギー比は高齢になるにしたがって低下し、70歳以上の高齢者では21%程度となります。高齢者の健康指標と食品摂取に関する観察研究において、肉類や油脂類などの重要性が強調されるのは、高齢者はこれらの食品群の摂取量が他の年齢層に比べて少ないことが原因と考えられます。言い換えれば、高齢者の食事から食品摂取の多様性が失われているのです。

  筆者(熊谷教授)らは、ある地域において、高齢者の食品摂取の多様性が高次生活機能の低下に及ぼす影響を調査しました。一般に推奨される「1日30品目の摂取」は、食品摂取の多様性を促す指針として広く普及しています。しかし、この指針では同じ食品群でも品目が異なれば1品目とカウントしてしまいます。食品群が同じであれば含まれる栄養素構成は類似しますから、摂取する品目数の多いことが多様な栄養素を摂取することにつながるとは必ずしもいえないのです。

この欠点を補うため、この調査では、主菜、副菜を構成する10食品群を選び、その摂取頻度で評価する方法を考案しました。「肉類」、「魚介類」、「卵」、「牛乳」、「大豆・大豆製品」、「緑黄色野菜」、「果物」、「芋類」、「海藻類」、「油脂類」の10食品群をとりあげ、それぞれの食品群をほぼ毎日摂取していれば1点を与えますので、すべてをくまなく摂取している場合の得点は10点となります。

  図5は、この方法を用いて、地域高齢者約600名の食品摂取の多様性得点を調査し、1~3点、4~8点及び9~10点のグループに分け、それぞれの高次生活機能(表1の1~13の項目)の5年間の障害リスクを比較しています。食品摂取の多様性得点が高いグループほど段階的に危険度は低下し、1~3点のグループに対して9~10点のグループは危険度が約40%低いことがわかります。この研究成果は、多様性に富む食品摂取習慣を営んでいる高齢者ほど要介護のリスクが低いことを示しています。この食品摂取の多様性得点は高齢者の健康指標の予測妥当性を保有しており、栄養改善プログラムとして介護予防事業に取り入れる自治体も増え始めています。

【 図5 食品摂取の多様性得点群ごとの老研式活動能力指標 】



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