オリーブ油のお話し

1.日本の食生活に定着したオリーブ油

 オリーブ油が日本の食生活にもしっかりと定着し、“オリーブ油"というとサンオイルを連想する時代が遠くへ過ぎ去ったようにさえみえます。しかし、オリーブ油が日本の食生活に普及するようになって漸く10年が経過したに過ぎないのです。

 15年前、1992年のオリーブ油の輸入量は、わずか4,860トンでした。それが、3年後の1995年には9,250トン、96年に18,242トンと倍増を続け、1998年に更に倍増の34,488トンに達しました。それ以降は、多少の変動はありますが、約3万トン台で安定して推移しています。

 仮に、3万トンに達した年を日本の食生活にオリーブ油が定着した時期と考えると、まだ9年しか経っていないということに驚きさえ感じます。

 オリーブ油消費の増加は“健康"がキーワードになっていました。一つは、イタリアを中心とする地中海料理が健康を維持するのに適切な食事であることが示され、そのポイントになる素材としてオリーブ油が注目されたことです。もう一つは、オリーブ油に豊富に含まれるオレイン酸が、悪玉コレステロールだけを下げるはたらきがあることが認められたことです。

 しかし、健康増進に寄与する食生活は単一の素材だけで実現できるものではありません。地中海料理は、鮮度の高い魚介類や多様な野菜を、ふくよかな香りのオリーブ油で調理することに特徴があります。この多様性が健康的な食生活を実現している理由ではないでしょうか。また、コレステロールを下げるはたらきも、他の脂肪酸との共同作業の結果であるというふうに考え方が変わってきました。

 このため、オリーブ油は“健康神話"の時期を通り過ぎ、毎日の食卓を豊かにし、味わいを愉しむ食材という意識に変化してきたように思います。そのことが、日本の食生活になじみが深い油となった理由なのでしょう。 

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