アメリカニューヨーク市のトランス酸規制について
 去る12月6日、アメリカのニューヨーク市(NY市)健康委員会は、レストラン等において提供される食事に含まれる“トランス酸(トランス型脂肪酸)”の含有量を規制する条例案(NY市健康条例の一部改正)を提起しました。このことは日本のメディアでも報道されましたが、誤認のある報道も少なくありません。このため、NY市が公表した内容とアメリカの食生活の実態を紹介し、何故このような規制を提起することとなったのかについてご報告します。


トランス酸とは?

 まず、“トランス酸とは何か”を説明しなければなりません。油脂は脂肪酸とグリセリンが結合してできた物質です。この脂肪酸は、炭素に水素2個が結合した分子(CH2)が長く鎖状につながったもの(炭素鎖、たんそさ)ですが、不飽和脂肪酸ではこの炭素鎖の一部に水素が1個しか結合せず、炭素の二重結合が見られます。この二重結合部分を挟んで炭素鎖が並列的に結合したものをシス型、対角線上に結合したものをトランス型と称しています(下図参照)。


【 図1 トランス酸の概念図 】

図1 トランス酸の概念図


 トランス酸は通常の油脂にも存在するもので、反芻動物の獣肉の脂肪分や乳脂肪に比較的多く含まれ、植物油にも少量含まれます。また、不飽和脂肪酸を硬化(水素添加)させるときに発生しやすく、トランス酸を高い割合で含むことがあります。

 トランス酸を多く摂取すると、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスクが高まるとされており、このような疾病による死亡の増加を防止するというのがNY市健康委員会の説明です。

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