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 明けましておめでとうございます。皆様には、2005年の幕開けをお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。

 めでたき初春に相応しいご挨拶を申し上げたいのですが、植物油業界は大きくうねる荒波の真只中で、本年の幕開けを迎えることとなりました。新年にはふさわしくない厳しいご挨拶を申し上げるのは心苦しい次第ですが、私ども日本植物油協会は、この荒波をうまく乗り越えるため今年も精一杯努力をいたし、食品産業の発展に何がしかの貢献をいたしたいと願っております。


 昨年は、私ども植物油業界が操業計画や経営計画を構築する基礎的な与件に大きい変動が生じ、私どもは大変に苦しい1年を過ごして参りました。それらの変動は、過年度限りの一過性のものもあれば、本年にも余韻を引きずり、構造的なものとなるものもあります。これらの見定めが、私どもにとって何より重要なことと認識いたしております。

 昨年、何よりも激しい変動を繰り返したのは、油糧種子の国際需給と価格であります。1ブッシェル10ドルを突破した大豆をはじめ、菜種、ごまなどの価格高騰があり、増産の情報が明らかになると急速に反転するという目まぐるしい変動がありました。そして、今後の国際需給を規定する構造的な動きも明らかになりました。世界の製油業界の熾烈な競争の場となった中国は、大豆のみならず、ごまについても輸入国に転じ、油糧種子の国際市場における攪乱因子から、需要牽引因子へと変貌しました。これは、オリンピックや万博を控えた一時的現象ではなく、今後の世界の製油業界の動きに大きい影響を与える存在となったことを意味しております。私どもは、この巨大な隣国の動静に一層注目しなければならないところです。


 激動とも言うべき2004年が去り、激動の後始末を丁寧に行うことは当面する大きい課題であります。なお、混乱気味の国内植物油市場を健全でバランスのあるものへと修復していく努力を重ねていかなければなりません。このためには、植物油製造に携わるものが認識を共有し、お客様の皆様方の深いご理解を頂戴することが大切であります。私どもの業種は、植物油連鎖ともいうべき関連産業との長いつながりを有しております。この連鎖に位置する全ての皆様方が発展しなければ、当業界の発展もないことを改めて確認いたしております。

 さて、私どものみならず、農業及び食品産業界が当面する重要な課題にWTO農業交渉があります。数度の失敗の積み重ねを経て、昨年8月はじめに漸くモダリテイー確立のための議長調停案が合意を得るところとなりました。この合意は、困難な問題を先送りしたものとの批評もありますが、関税や輸出補助金などの貿易制度に関しましては明確な方向が示されたものと受け止めております。アメリカの組閣、EUの閣僚交替などのため政治的な問題に関しての議論は停止状態にありましたが、まもなく厳しい論議が展開されると考えております。特に、農業・食品産業において高い競争力を有するブラジルが発展途上国の連携を図り、その旗頭として活動を展開しております。植物油関連産業がめざましい発展を遂げているブラジルやアルゼンチンの動向は、世界の巨大製油資本の動きそのものであり、私ども植物油業界にとりまして、その動向には目が離せないところであります。

 また、WTOと平行してFTAあるいはEPAの動きも活発となり、マレーシアなどアジア4カ国とのFTAにとどまらず、小泉首相はアジアにおけるEPAの促進を高らかに宣言されました。私どもは、貿易問題、就中関税問題に関し、油糧原料基盤を持たない国には原料生産国との間に克服しがたい構造的な格差があり、これを調整するものとして一定の関税の存在が不可欠であることを申し述べて参りました。この基本姿勢に基づき、表面に現れた個々の動きに一喜一憂するのではなく、貿易の自由化は世界の趨勢であることを受け止めつつ、それぞれの国・産業の固有の条件を重視したバランスある貿易制度が必要であることを、これまで申し上げて参りました。私どものこの基本的な考えは、「それぞれの国における多様な農業の持続的発展を基本目標に置く」という政府の高いご見解に沿うものと確信いたしております。引き続き、政府の賢明なご判断・ご指導をお願い申し上げるところであります。


 最後に、昨年、当協会会員企業の合併が行われ、植物油製造業界の構造変革への第一歩が踏み出されました。冒頭に申し上げた激動と遭遇し、合併の成果が十分に得られたという状況にはありませんが、それぞれの経営合理化という範疇にとどまらず、透明性のある国内市場の構築に向けて大きく踏み出したと認識いたしております。

 申すまでもなく、当協会会員企業はそれぞれが良き競争相手であり、変わりゆく業界構造のなかで自らの位置づけを確立するため、一層切磋琢磨していかねばならないと認識いたしております。このためにも、当協会は会員相互の透明性の高い競争が実現できる土俵づくりと、顧客の皆様への的確な反応を基本課題として、本年も努力して参りたいと考えております。皆様の倍旧のご交誼を賜りますことをお願い申し上げ、年頭のご挨拶といたします。

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