油脂の消費に対する政府の政策

(政府が食事ガイドラインを策定)


 オーストラリアでも他の先進国と同じように生活習慣病が増加しており、2000年の死因のトップ3は、癌、心臓病、脳卒中となっています。このため、政府や関連団体は、生活習慣病予防の観点から、従来から食生活改善のための様々な活動を行ってきました。健康関係の職業に従事している人を対象にした食生活改善の指針となっているのが、連邦政府の法定機関である全国健康・医療研究協議会(NHMRC)が策定している「オーストラリア人のための食事ガイドライン(Dietary guidelines for Australians)」です。これは、1982年に初版が発行され、1992年に改訂されていますが、現在、新しい食事ガイドラインの改訂作業が進められています。92年版の概要は、次のとおりとなっています。  
表5 オーストラリア人のための食事ガイドライン
( 1992年改訂 )


・ 多種類の栄養のある食品を楽しむ。
・ パンとシリアル、野菜、果物をたくさん食べる。
・ 脂肪が低い、特に飽和脂肪が少ない食事を摂る。
・ 運動と食物摂取のバランスを取ることによって、健全な体重を維持する。
・ もし飲酒するなら、摂取量を制限する。
・ 砂糖と砂糖が含まれている食品は、適切な量をとる。
・ 食塩の少ない食品を選ぶとともに、食塩の使用は控える。
・ 母乳で育てることを奨励し、支援する。
(脂質の摂取過剰と肥満が増加)

 現在検討中の食事ガイドライン原案の基礎資料として活用されているのが、全国栄養調査1995(National Nutrition Survey 1995)です。これによると、オーストラリアにおける成人の摂取エネルギーの栄養素別比率は、たんぱく質が17.1%、脂質が32.5%、糖質(炭水化物)が46.0%、アルコールが3.7%となっています。このうち、1人1日当たりの脂肪分の摂取量は、1983年から1995年の間に、男性が105gから98.5gに、女性が70gから67.6gへと若干減少していますが、脂質摂取比率は適性水準とされる27%を大幅に上回っています。脂質構成割合32.5%の脂肪酸別内訳は、飽和脂肪酸が12.7%、多価不飽和脂肪酸が11.8%、単価不飽和脂肪酸が5.0%、その他が3.0%となっており、それぞれの割合は1983年から1995年の間に大きな変化は生じていません。また、1980年以降肥満と判定される人が増加しており、1995年には男性で63.7%、女性で47.0%の人が肥満であることが明らかにされています。


(飽和脂肪酸の摂取削減を指導)

 脂質の摂取について、82年版ガイドラインは「多すぎる脂肪分の摂取を避けましょう」としていましたが、92年版では「飽和脂肪酸が少ない食事を摂りましょう」と脂肪酸の種類に言及するようになりました。現在検討されている新しいガイドラインの原案でも、上述したように脂質の摂取比率が高く、肥満が増加しているという問題点を踏まえ、油脂の摂取を減らすことを提案しています。特に、油脂の中でもコレステロールを増加させ、心臓病発生のリスクを高めるとされる飽和脂肪酸の摂取を減らすことを強調する内容となっています。原案では、油脂の摂取について次のように指摘しています。
表6 好ましい油脂の摂取
(新しい食事ガイドライン原案より)


・ 飽和脂肪酸の摂取エネルギー比率を12.7%から10.0%に下げる。
・ パーム油やココナッツ油より、他の植物油を選ぶ。
・ バターより、不飽和脂肪酸が多いカノーラ油やサフラワー油、ヒマワリ油、
  オリーブ油等から作られたマーガリンを使う。
・ 低脂肪のミルク・ヨーグルトを選ぶ。
・ 飽和脂肪酸の多く含まれるビスケットの摂取を少なくする。
・ 1週間に、2~3回は魚(特に油の多いイワシやマグロ、サーモン等)を食べる。
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