4.低い自給率と供給リスク

 植物油自給率が4%と極端に低いといっても、このことがそのまま供給不安につながるわけではありません。たとえば、世界の国がすべて100 %食料を自給するようになったと仮定し、それでリスクが減少するかというと、逆に貿易量がなくなった分、凶作に見舞われた国は大変な困難に見舞われることになります。常に一定程度の貿易が行われ、物が自由に動くことによって、凶作のリスクを分散・軽減できることになります。無論、自由な貿易によって、農業の競争力の強い国が弱い国の農業を押しつぶす危険が伴いますが、一方、安定して輸入することが輸出国の農業を育てる側面もあるのです。農産物輸出国が、しっかりした目標もなく自国の需要を上回る生産を続けることは、そう簡単なことではありません。輸出国にとって、安定して輸入してくれる国の存在が不可欠なのです。英国の食料自給率が大幅に改善されたことについて触れましたが、反面、自国内の需要を上回る生産が実現したため余剰農産物(小麦)が生じ、財政面の問題を抱え込むことになっています。輸出を増やすことができれば、そういった問題を解決できることになります。

 この数年、南米(ブラジル、アルゼンチン)の大豆生産が急速に増加し、アメリカの地位を脅かす存在になってきました。しかし、南米の大豆生産拡大のきっかけが、1980年にソ連のアフガン進入に対する制裁措置として、アメリカが実施した穀物禁輸措置にあったのは皮肉な現象です。ソ連が米国から買えない大豆を南米から大量に、しかもプレミア付きで輸入したため、南米の農家が潤い、増産できる資金力を得たわけです。しかし、確実に販売できる市場がなければ余剰を抱えることになります。大豆については、世界の需要が拡大していることから、現在では需給が逼迫気味の状態にありますが、それでも長期的に安定した輸出先を確保するため、輸出国は競争力の強化にしのぎを削っているのです。

 安定した生産国、安定した購入国の双方が存在して初めて供給の不安が解消されます。どちらか一方が身勝手な行動をとれば、そのことが供給不安を招きます。このためには、双方が信頼感のある関係を継続することが何より大切なのではないでしょうか。

 私たちはこのように考え、油糧種子の主要生産国であるアメリカ、カナダの生産団体との定期的な協議と交流、その他の国についても不定期ながら交流を重ね、お互いの存在が大切であることを認め合う関係を築いてきました。このことが、4%という低い自給率の中で、植物油供給に不安を生じさせない要素になっています。

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