一般社団法人 日本植物油協会 社団法人日本植物油協会は、日本で植物油を生産している企業で構成している非営利の業界団体です。

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発見! 植物油と和菓子の愉しい関係

植物油を用いたお菓子というと、油で揚げたお菓子、油をあんこに練り込んだ月餅などの中華菓子、ケーキ、クッキーなどの洋菓子を思い出されるかもしれませんね。
しかし、意外や意外! 和菓子にも植物油ととても愉しい関係があることを発見しました。
和菓子とひと口にいっても、銘菓といわれる高級なものから、昔ながらの素朴なお菓子まで多種多彩です。この中で、植物油が直接的に用いられるのはかりんとうに代表される揚げ菓子などがよく知られています。ところが油として利用されていなくても、植物油ゆかりの素材は、和菓子の世界で大きな存在感を示しています。
たとえば、ごまはすりつぶして餡(あん)にまぜたり、あるいはお菓子の表面にまぶして利用されていますし、大豆を煎って作るきな粉は、団子をはじめ日本のお菓子文化になくてはならないものですね。
それでは長い歴史を有する和菓子と植物油との愉しい関係を、ちょっとのぞいてみましょう。

かりんとう

油を使う揚げ菓子の中で、もっともポピュラーなのが、かりんとう。起源については、遣唐使がもたらした唐菓子説や、ポルトガル人によって伝えられた南蛮菓子説など諸説ありますが、はっきりしたところはわかりません。砂糖が貴重だった時代には上層階級のお菓子でしたが、黒砂糖が普及する江戸時代には庶民にも親しまれるようになりました。

かりんとうは、小麦粉に水飴などを加えてこね、米油や菜種油などの植物油で揚げてから、蜜をかけるというのが基本の作り方です。しかし、単純な棒状のほか、渦巻き状、わらじ状などさまざまな形態のものを作ることによって見た目の愉しさを演出し、材料もそば粉からにんじん、かぼちゃま、竹炭などいろいろなものが利用されるようになりました。

東京のかりんとうを代表する「花月(かげつ)」の黄金色かりんとうは、温度が異なる油で3回揚げ、甘味を抑えた蜜でしっとりからめ、こだわりの逸品に仕上げています。

● 花月(東京都文京区湯島3-39-6)
http://www.karintou-kagetsu.com/

かりんとう

かりんとう

かりんとう

現在の和菓子の原型は、奈良・平安時代に大陸からもたらされ唐菓子といわれていますが、あまりに昔のことなので、その形状や製法については詳しくわかりません。そんな中で、お寺や神社のお供えとして伝えられてきたお菓子に、唐菓子の系譜に連なるものがいくつか残されています。

愛知県の津島神社ゆかりの縁起菓子「あかだ」はその一つで、植物油(ごま油や菜種油)で揚げた揚げ菓子です。悪疫退散を祈願した弘法大師が考案したのが起源とされ、うるち米の粉にごまをまぜてから熱湯でこねて団子にし、甘味は使用せず、油でじっくり揚げたものです。

一方「くつわ」は、江戸時代後期に誕生しました。うるち米ともち米の粉にごまをまぜて熱湯でこね、蒸した後に砂糖を加え、もちのようにつき、馬のくつわの形に整えてから油で揚げます。

あかだ屋清七の「あかだ」と「くつわ」は菜種油を使用し、手作りにこだわって、古来の味を今に伝えています。

● あかだ屋清七(愛知県津島市祢宜町1)
http://www.clovernet.ne.jp/~akasei/

あかだ・くつわ

あかだ・くつわ

洲浜(すはま)

洲浜は、きな粉より一段浅く大豆を煎って粉にし、砂糖や水飴などを加えて練り、竹を使用して形を整えて作られます。その切り出した面が、浜辺の入り江のように見えることから命名された優美なお菓子。

和菓子の中では珍しく油分を感じさせる味わいで、大豆の香ばしさとしっとりした口当たりが魅力です。

今やこの意匠の洲浜を作っているのは、300年あまりの歴史をもつ京都の「植村義次(うえむらよしつぐ)」だけで、伝統を感じさせる一品です。

● 植村義次(京都市中京区丸太町烏丸西入ル)

洲浜(すはま)

洲浜(すはま)

南部せんべい

アフリカ原産のごまが日本に伝わったのは縄文晩期。以来、日本の食文化に大きな影響を与えてきました。南部せんべいを代表的するごませんべいは、小麦粉をこねて塩を加え、ごまをまぶして型に入れて焼き上げます。ほどよいごまの香りとパリパリした食感が味わいを深めています。

起源については諸説ありますが、保存がきく南部せんべいは、戦時の野戦食や飢饉(ききん)の救荒食として発達してきたという説が有力です。植物油の中でもっとも酸化しにくいというごま油の性質が、日持ちのするお菓子を生み出したと言ってもよいでしょう。

現在は、旧南部藩に属した青森県と岩手県の各地で製造されています。その一つである巖手屋はチベットの天然塩を用いるなど、こだわりをもって南部せんべい作りに励んでいます。

● 巖手屋(岩手県二戸市石切所字前田41-1)
http://www.iwateya.co.jp/company/index.html

南部せんべい

南部せんべい

長生殿(ちょうせいでん)

紅花の種子を搾ってできるのが、紅花油(サフラワー油)。この花の部分を摘んで発酵・乾燥させると、赤色の着色料や染料になり、食べ物や口紅や織物の染色用として広く使われてきました。

紅花は3世紀末に日本に渡来したとされ、「末摘花(すえつむはな)」などの古名があるように、古くから人々に親しまれてきました。しかし、採取できる量が少ないところから、江戸時代には大変高価なものだったそうです。

和菓子の分野でも、古くからこの無味無臭の天然色素を取り入れ、色彩豊かな世界を作ってきました。

老舗の森八の「長生殿」は阿波徳島の和三盆糖、北陸産もち米の粉、山形産の本紅を用いた由緒ある干菓子。口の中でふわりと上品な甘みが広がり、日本三大銘菓の一つといわれています。

● 森八(石川県金沢市尾張町2-12-1)
http://www.morihachi.co.jp/index.html

長生殿(ちょうせいでん)

長生殿(ちょうせいでん)

菜種の里

和菓子の特色の一つは、四季折々の自然の風物を美しい色と形で表現していることにあります。日本人の感性を示す独自の文化といえるのではないのでしょうか。

三英堂の「菜種の里」は、春の菜の花畑で白い蝶々が舞う様を見立てた干菓子です。実際に菜種を使用しているわけではなく、寒梅粉(もちをせんべい状に白焼きして粉にしたもの)に砂糖を加えた落雁(らくがん)で、煎り米が散らされています。

ほのかに塩味がきいた上品な味わいの「菜種の里」は茶席のお菓子によく用いられますが、名付けたのは茶道に造詣が深かった松江藩主・松平不昧(ふまい)公といわれています。

● 三英堂(島根県松江市寺町47)
http://www.saneido.jp/index.html

菜種の里

菜種の里

  • 【 参考資料|
  • 「事典 和菓子の世界」(中山圭子 著岩波書店)/
  • 「和菓子 夢のかたち」(中山圭子 著 東京書籍)/
  • 「縁起菓子・祝い菓子」(亀井千歩子 著 淡交社)】