菜種生産の限界に挑むカナダ

2.会議のポイント

大豆油をビヒクルの主原料に用いる大豆油インキ(又は、大豆インキ)は、1970年代のオイルショック後、アメリカで全米新聞出版業者協会(ANPA)の呼びかけにより、石油系に代わるビヒクル素材として大豆油を利用することが呼び掛けられました。しかし、もともと乾性油ではない大豆油をビヒクルに用いることには困難がありました。当初開発された黒色の大豆油インキは乾燥に長時間を要するという欠陥があり、また、石油系に比較してコストがかなり割高になるものでした。
これに対し、大豆油を用いたカラーインキは色の延伸びがよく、コストもむしろ有利であったことから、一部のANPA会員の出版物で利用されました。その後、補助剤の工夫など実用化のための改良が進められ、通常の印刷機で黒色、カラーともに使用可能な大豆油インキが完成しました。大豆油を原材料にすることから、大豆油インキは揮発性有機化合物(VOC)を発生させない環境負荷を軽減するインキであることが喧伝され、環境負荷軽減(エコ)に貢献することを主張したい企業戦略に訴え、アメリカ国内での利用が広がりました。
VOCを発生させないことは、他の材料を用いたインキの場合も同様でしたが、アメリカを代表する農産物である大豆を利用することは国策にも合致することであり、利用が広がったと考えられます。
大豆の用途拡大を模索していたアメリカ大豆協会(ASA)は、この動きを大豆の需要拡大に寄与するものととらえ、大豆油インキとそれを使用した印刷物に添付するロゴマーク(ソイシール)を定め、 製品に貼付(又は、はプリント)することを国内外で奨励する運動を展開しました。この運動は、1990年代半ばからASA日本事務所においても展開され、エコへの貢献を謳う企業や新聞業界などで大豆油インキの使用が広がり、このシールを貼付した印刷物(特に、企業の広報パンフレットなど)が発行されてきました。
しかし、2005年、ASAは大豆油インキがほぼ定着したとの判断から、新たなシールの発行は行わないこととして、この運動に幕を閉じました。

図5 ソイシール


資料:アメリカ大豆輸出協会日本事務所提供
 注:上は大豆油インキによる印刷物、下は大豆油を使用したインキの容器に添付するシール。
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