植物油を使用する主婦の意識に変化? -引き続き価格と健康がキーワード-

3.菜種貿易を巡る日本とカナダの固い連携

(1)植物油といえば、サラダ油!

 主婦の皆様がもっともよくご存じの油は引き続き「サラダ油」で、全員の方がご存じでした。
 実は、家庭用に販売されている菜種油やべに花油も、国が規格を定めているサラダ油がほとんどなのですが、この調査では、商品名によってお答えをいただいていますので、法令上の厳格な分類とは異なったものになることをご理解ください。

 製油メーカーは、主として菜種サラダ油と大豆サラダ油をミックス(法令上の用語では調合)した食用油を、「サラダ油」という商品名で家庭用に提供してきました。この数年、家庭向け食用油の市場では、このサラダ油のシェアが急速に低下し、「キャノーラ油(なたねサラダ油)」が最も多く販売される油となっています。しかし、主婦の皆様は、長年親しんでいただいた「サラダ油」という名称をしっかりと記憶いただいておりました。これに、「ごま油」、「オリーブ油」、「なたね油」、「べに花油」、「コーン油」が続くのは、調査開始以来変化がありませんが、コーン油をご存じの方が段々と少なくなってきました。
 特定の健康機能を付与した油では、「コレステロールが気になる方向けの油」を知る方が着実に増加しています。
 これに対し、世界で最も多く利用されている「パーム油」を知る人は少なく、「大豆油」を知る方も減少する傾向にあります。

 それでは、油が知られている程度(認知度)と実際に使用されている油との間には、どのような関係があるのでしょうか。それを、図5に示しました。
 よく知られている(認知度が高い)上位3種の油(サラダ油、ごま油、オリーブ油)は、実際にご家庭で使用される割合(使用度)も高いという結果になりましたが、なたね油は認知度の割には使用度がやや低いという結果となりました。
 これらに対し、その他の油種では、認知度の高さに比べて実際の使用度がかなり低いという特徴がみられます。このことは、家庭用製品として販売される数量と関連しています。例えば、「パーム油」と「大豆油」は、日本で供給される植物油のなかで2、3番目に供給量が多い油種ですが、パーム油を使用した家庭用製品がごくわずかのものに限定され、大豆油も家庭用製品が少ないということを反映しているのでしょう。もっとも、大豆油はサラダ油の材料として用いられていますので、実際に家庭用製品として使用される数量はもう少し多いこととなります。

 ただし、ごま油とオリーブ油は、供給量が少ないにもかかわらず認知度、使用度ともに高く、この法則には該当しません。その理由については、次に説明しましょう。

【 図5 油の認知度と使用度 】

図5  油の認知度と使用度

注:「コレステロール」は、「コレステロールが気になる方」向けの機能を付与した油のこと。

(2)油を選ぶ基準は価格と健康

 上に述べた油の使用度は、主婦の皆様がそれぞれの油に対してどのようなイメージをお持ちであるのかということと関係があります。お店で油をお買い求めになるときの、油の選択理由と言い換えても良いかもしれません。
 油をお求めになるときに最も重視される選択理由は、調査開始以来「価格」と「健康」がそれぞれ35%前後を占め、他の理由はぐんと低いものとなっています。他の食品では、例えば「おいしさ」などが大切な選択理由になるかもしれませんが、油の場合は、このような傾向となっています。
 今回の調査では、「価格が安いこと」を最も重要とした方が38.4%、「健康によさそう」とした方が33.7%でした。2年前の調査では、この地位は「健康」が38.4%、「価格」が32.9%でした。この調査をもって、最近の経済情勢を反映したものと判断するには無理がありますが、今後も、この2つが重要な選択理由になっていくことには変わりはないでしょう。
 そこで、人気のある主な油について、ご利用になる主な理由(複数回答)を、図6に整理しました。

【 図6 主な油を利用する理由(複数選択) 】

図6  主な油を利用する理由(複数選択)

 使用度が高い上位4種の油は、それらが選択される理由にくっきりとした差があることにお気づきでしょう。
 サラダ油となたね油は価格が主要な選択理由で、オリーブ油は健康とおいしさ、ごま油はおいしさと風味・香りを主な理由としてお求めになっていることが分かります。もっとも、オリーブ油やごま油の選択理由に価格の安さが挙げられていますが、これらの油の価格は決して安いものではありませんので、期待する効果に対して価格が相対的に割安とお考えになったのかもしれません(この調査では明確には断定できません)。
 年齢階層別には、若い年齢層では「価格、おいしさ、風味・香り」の割合が高く、お歳を召すにつれて「健康」が選択理由として高まる傾向が見られます。
 これら以外の油の利用度が一段と低いことと併せると、「相対的に割安感のあるサラダ油となたね油を基本にして、オリーブ油とごま油を利用して味わいや風味・香りを楽しむ」という生活をされているご家庭の姿が見えてきます。図表では示しませんが、ご家庭に常備されている油の使用については、70~80%の方が、調理の方法(揚げ物、炒め物、サラダなど)や料理の内容によって複数の油を使い分けているとお答えいただきました。
 油を供給するものにとりましても、このように油の特徴を理解され、上手に使い分けしていただくことは大変ありがたいことです。

(3)植物油の身体機能に対する効果

 油を選択される主な理由に一つである「健康」に関連して、植物油が有している身体の健康との関係について、いくつかのお尋ねをいたしました。
 「植物油がカロリー源であるだけでなく、身体の健康維持に不可欠の食品である」ことをご存じの方(「よく知っている」、「多少知っている」の合計)の割合は65%で、その理由の一つである「身体の機能維持に大切な脂肪酸を含むこと」は53%の方がご存じでした(図7)。
しかし、「リノール酸、リノレン酸が身体の健康維持に不可欠の成分であること」と、「植物油には、健康維持に大切なはたらきをする微量栄養成分が含まれていること」については、過半の方がご存じではありませんでした。

【 図7 植物油の機能についての認識 】

図7 植物油の機能についての認識

 この結果から、主婦の皆様の多くは、「植物油は何となく健康維持に役立ちそうだけど、どうしてかな?」という疑問をお持ちなのかもしれません。60%を超える方が植物油が健康維持に不可欠の食品であると認識していただいているることは、私どもにとっては嬉しく、心強いことですが、今回の調査結果を踏まえて、植物油と栄養に関してより充実した情報を発信することが大切であることを示していただいたと受け止めています。
 植物油が身体の健康維持にどのようなはたらきをするのかについては、脂質栄養学の研究者・学者の研究に基づく様々な学説があります。しかし、それらの学説は一様ではなく、例えば一つの脂肪酸のはたらきについても数多くの学説があり、中には内容が真っ向から相反する学説さえあります。また、新しい調査や分析能力の向上によって学説は日々変化します。
 それらの学説から極端な主張を排除し、現在の平均的な脂質栄養学によれば、植物油はいずれの油種であっても、適正に摂取されれば身体の健康の維持・増進に大切なはたらきをする食品であることが明らかにされています。しかし、過剰な摂取や、その逆の摂取量の欠乏は、身体機能の維持を妨げることも十分にご理解いただきたいことです。
 主婦の皆様をはじめ消費者の皆様に植物油の大切なはたらきをお伝えすることは、日本植物油協会の重要な役割の一つであると考えています。日本植物油協会ホームページの「植物油の基礎知識」において、植物油と健康について整理した情報を提供しています。また、ご依頼に応じて、植物油と栄養に関する学習会などでご説明しています。これらをご活用いただき、植物油へのご理解を深めていただくことを願っています。

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