豊作の中の需給逼迫というパラドックス

3.これからのカナダの菜種生産

 カナダの本年の菜種生産が、カナダ菜種協会が設定した2015年目標を3年早く達成した ことは既に述べました。カナダ菜種協会は、新たに2020年もしくは2025年を目標年次とする計画の検討に入りました。無論その内容はまだ明らかにされていませんが、これまでのような増産を継続するためには、いくつかの困難な課題を克服することが必要になっています。

(1)栽培面積の確保

 生産の増強を図るうえで、最も重要な課題は十分な栽培面積が確保できるかどうかということです。この点では、なかなか困難な問題が存在しています。カナダの可耕地面積は、2,300〜2,400万ヘクタールとされています。このうち菜種の主産地である西部大平原の可耕地は2,000万ヘクタール強と見込まれます。2012年産の菜種は、既にその3分の1強に当たる約850万ヘクタールに栽培されています。作物学と経営の合理化の両側面から、菜種は3年に1回程度の輪作が好ましいとされていますが、現実には菜種の収益性が優れているため、「菜種―菜種」の連作が増えています。菜種生産が健全に発展するためには、合理的な輪作体系の確立が不可欠であり、政府の研究機関ではそのための研究が推進されており、基本的には3年に1回の輪作が理想的としています。そのためには追加的な面積を必要とします。これについて菜種協会関係者は「現在、輪作の一形態として実施されている休耕地(Summer Fallow)の面積が約450万エーカー(約180万ヘクタール)、政府所有地がその10分の1ぐらいある。それらが追加的面積となり、同時に菜種栽培面積の限界となる」としています。

(2)単収の増加

 栽培面積に限界があるとすれば、生産拡大のカギは単収が握ることとなります。菜種の単収については、他の作物に比べて大きい成果を上げてきました。菜種の単収は、この10年間に4.4%増加しており、小麦の1.6%を大きく上回っています。そして単収だけではなく品質(油分)の向上が同時に達成されました。これはカナダ菜種協会を中心に官民挙げて「顧客の期待に合致する菜種の生産」に取り組んできた結果です。カナダの種苗登録法では、一定の単収に加え油分が高いことが種子登録の要件とされ、非常に高い単収が期待できる品種であっても油分が低ければ登録されず、登録されない品種は販売が許可されない仕組みになっています。これが、高単収と高油分を同時に達成する最も重要な要因となりました。ただ、作物にはそれ自体が有する限界があります。現在の単収や品質がこれ以上向上するのかどうかが、今後の生産拡大の決め手となります。

(3)急増する生産農家の投資

 第36回日加菜種予備協議の席で、カナダ菜種生産者協会会長は、菜種生産の経営上のリスクが高いことを「現在の菜種生産農家は、掛け金の高いポーカーの席に座っているようなものだ」と表現しました。この20年余りの間に、生産農家の投資額は急増しています。その最も大きい要因は、カナダの農村風景を演出していた小型のカントリーエレベーターが姿を消したことにあります。これは菜種だけではなく穀物類も含めた集荷の合理化を図ることを目的として、広範なエリアに大型の中継エレベーターを設置することに取って代わられました。それにともない、生産農家がカントリーエレベーターに代わる近代的保管施設を装備しなければならなくなりました。いまでは農家には温度の自動管理が可能な保管施設を有することが普通になりましたが、その投資額が農家の大きい負担となりました。無論、大型のトラクターと付随する機械・装置、肥料や農薬の費用、種子価格も10年前に比べて2倍近い負担となりました。現在の高い菜種価格がそれらの投資を補っていますが、価格が低下すれば大きい負債を抱え込むこととなります。。

(4)カナダ小麦局の行方

 カナダで生産される小麦、大麦の独占的集荷を行ってきたカナダ小麦局(Canadian Wheat Board : CWB)は、市場自由化法の制定に伴い、本年8月から独占的集荷業務を停止し、他の主出業者と同列の集荷・流通機関として機能することとなりました。そして菜種の集荷をも取り扱う機関に変貌することとなりました。CWBは小麦・大麦の独占的集荷だけではなく、鉄道の貨車割り当て、バンクーバー港の施設の利用、配船にも大きい影響を有しており、民間企業からはその独占的地位が適正な競争を排除し、非合理な貨物の取り扱いを余儀なくしてきたとの批判がありました。独占的集荷が廃止されたとはいえ、生産農家にはまだまだ強い影響力を有していると考えられます。これから先、CWBが1集荷業者として、どのように機能するのかも、菜種やその他の作物の生産に影響を与えることとなりそうです。

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