植物油とパン粉、おいしい関係
5.パン粉のいろいろ

  ところで、市販されているパン粉はさまざまです。パン粉の種類と、その使い方について、全国パン粉工業協同組合連合会専務理事の丸山さんにお話しを伺いました。

(Q)全国でどれくらいのパン粉が作られているのでしょうか?
  年によって若干の変動はありますが、年間約15万tのパン粉が作られています。

【 表1 パン粉の生産量推移 】

(単位:トン)
暦 年 2006年 2007年 2008年
生産量 149,160 148,203 150,953

(Q)パン粉にもいろいろな種類がありますね。主な種類を教えてください
  パン粉の種類は、“生パン粉”と“乾燥パン粉”に大別できます。
  生パン粉は、粉砕したパンをそのままパン粉にしたもの、乾燥パン粉は、粉砕したパン粉を規定の水分値まで乾燥させたものです。また、それぞれに砕く大きさによって、“粗目(あらめ)タイプ”“中目タイプ”“細目タイプ”に大別されます。

(Q)パン粉独特の製法があると聞きましたが?
  パンの焼き方は2種類あります。
  一つは“焙焼式製パン法”と呼ばれ、オーブンでパンを焼く、皆様がよくご存じの焼き方です。
  もう1つが“電極式製パン法”と呼ばれ、パン粉製造独特のものであります。パン生地を電極板で挟み通電加熱してパンを焼きます。オーブンで焼く場合と異なり、内部より発熱することから、パンのすだちが焙焼式製パン法に比べて優れており、パンの外部は美しい白色に仕上がります。

(Q)パン粉の種類が異なると、揚げ物がどう違ってくるのですか?
  パン粉の粒の大きさが違うと、揚げ物の見栄え(ボリューム感)に大きな違いがでます。
  また、粒の細かいものの方が火を速く通すので、短時間で調理を行いたいタネ(素材)には細かいパン粉を使った方が適しているでしょう。
  また、パン粉の原料配合によって揚げ色が変わりますし、乾燥パン粉・生パン粉でも出来上がりが変わってきますので、ご自分の使いやすいパン粉を見つけることも、美味しいフライを作る秘訣といえますね。

(Q)乾燥パン粉と生パン粉の使い方の違いを教えてください。
  乾燥パン粉は、ハンバーグなどの生地に混ぜると、加熱するときに生じる、おいしさの成分を含む脂やエキスをパン粉が吸い込む働きをします。だから、フライの衣以外にも広くご使用いただけますね。
  一方、生パン粉は、乾燥パン粉にはない大きな粒のパン粉になりますから、トンカツなど外観と食感に特徴がある衣を作ることができます。

(Q)パンは生鮮食料ですが、パン粉はそうではありませんね。品質を保つため、どんな工夫をされているのですか?
  衛生的な工場で生産をすることは当然ですが、微生物の発生を抑えるため、パン粉自体の水分調整やpH調整を行っております。また、生パン粉では、品質に影響する酸素の透過を抑えたバリア性の高い材質の包装フィルムを使用し、脱酸素剤も併用するなどの品質を保つ工夫をしています。

(Q)使用するパン粉の種類によって、カツなどの味が変わるような気がするのですが、どうでしょうか?
  粒の細かいパン粉より大きなパン粉の方が熱をゆっくり通すので、お肉が柔らかく出来上がります。また、フライの場合にはサクッサクッという衣の食感が美味しさの要素でもあります。製パンの方法や乾燥パン粉、生パン粉の違いによる触感の差もフライ製品の特徴を引き出す要因になります。

(Q)揚げ物以外にパン粉を上手く利用する料理がありますか?
  ハンバーグやグラタンに代表されるオーブン焼きは有名ですね。その他にも、香草パン粉を使った焼き物料理や、ふりかけや卵焼きへの利用、お菓子などにも使用され様々な使い方があります。パン食は西洋から伝わった文化ですので、昔から様々な西洋料理にも使われております。

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