いつまでも元気は、適正な食生活と運動から
1.からだの老化がもたらす健康障害

●からだの老化と栄養状態

  以上に紹介した研究の結果は、高齢者の栄養管理のあり方に深い示唆を与えています。
  これまで、高齢者の栄養管理や健康づくり活動は、主に病気の予防やその管理を目的として進められてきました。しかし、これまでの研究成果から、高齢者の栄養管理は、普遍的かつ連続的に進行する老化を遅らせるためのものでなければならないという結論を導き出すことができます。高齢社会では,栄養・食生活を老化そのものと関連づける新しい保健活動のフレームワークこそが必要なのです。

  そこで、老化の指標となる最大歩行速度を取り上げ、加齢に伴う低下が何によって決まるかを長期にわたり調べました。
  図3は、最初の調査時点で、追跡調査の対象者を血清アルブミンの値ごとに3グループに分け、それぞれの8年間の最大歩行速度の低下量を比較しています。血清アルブミンは血液中を流れるたんぱく質の約6割を占める非常に大切なたんぱく質で、からだの栄養状態を評価するには最良の指標です。つまり、血清アルブミン値が高い高齢者ほどからだの栄養状態が良好ということになります。
  この図からわかるように、血清アルブミンが高いグループほど最大歩行速度の低下程度が小さいことが、きれいな直線的な関係で表れています。からだの栄養指標である血清アルブミン値は、からだの筋肉量と正の関係を示します。栄養状態が良好で筋肉量が多い高齢者ほど、加齢に伴う歩行能力の低下が抑えられることを如実に物語っているデータです。

  また、この関係は、男性より身体筋肉総量が少ない女性でより若い年齢から明瞭にあらわれます。このように、老化の進む速度はからだの栄養状態により強く規定されていることがわかります。
  したがって、高齢者の老化を遅らせ、要介護と病気を予防するうえで栄養状態を改善することがとても重要になります。さらに強調しなければならないのは、この関係が臨床医学的には正常域とされる血清アルブミン値3.8g/dL以上の水準で見られることです。このことは、高齢者にとっては、からだの栄養状態を可能な限り高める栄養改善法が求められることを示しています。

【 図3 身体栄養状態と最大歩行速度低下の関係】


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