ごま油のお話し ― 香り豊かな食生活、そして、急変する国際市場 ―

4.ごま油供給の悩み

 我が国のごまの供給は、全量が輸入に依存しています。

 このため、輸入量=供給量とみなすことができます。平成19年(西暦2007年)に我が国が輸入したごまは約17万トンでした。そして、ごま油の原料として圧搾された数量は9万4千トンでしたから、7万6千トンがすりごまやごまペーストなどに利用されたことになります(正確には在庫の増減を計算しなければなりませんが、そのような統計がありません)。

 9万4千トンのごまから製造されたごま油は約4万5千トンで、これに輸入された数量(1,456トン)を加え、輸出量(5,771トン)を差し引いた4万1千トンが国内で消費されたごま油と推計できます。一人当たりの年間消費量は約350gとなります。

 輸出量が意外に多いことに驚かれるかもしれませんが、海外でもごま油の需要が高まっており、良質の日本産ごま油は高い評価を得ています。主な輸出先はアメリカで、アメリカ在住の日本、中国、韓国の人達の需要に応えています。

 
 平成19年のごまの輸入量17万トンは、24カ国から供給されました。

 ちなみに、15年前の供給国も24カ国でしたが、その内容は大きく変動しています。供給国が多岐にわたり、変動が大きいのがごま輸入の特徴であり、同時にごま油製造業界の悩みでもあります。

 図1は、主な供給国別にごまの輸入量を示しています。

 この図で、先ず、安定した供給国がないことと、主な供給国が全て発展途上国であることがお分かりいただけるでしょう。大豆や菜種は特定の安定した供給国(アメリカ、カナダ)がありますが、ごまは供給国が分散し、それぞれが必ずしも安定した供給国ではないという特徴があります。

 以前は安定した供給国であった中国は、国内の生産の減少と需要の増加を理由に2004年から供給量が急激に減少しました。ミャンマーは突然に輸出禁止を行うという不安感が伴い、現実に昨年半ばから搾油用のごまの輸出を禁止しています。

 中国に代わって、アフリカ諸国とパラグアイが日本への主要な供給国となっていますが、アフリカ諸国もナイジェリアが比較的安定した供給を続けているほかは変動が激しいものとなっています。安定した供給国を見つけにくい中で、輸入業界は少しでも供給してくれる国を探し続けているのが実態です。

 一般的に、農産物の国際需給が不安定な構造にある理由として、生産が天候に左右されることに加え、他国に供給できるだけの生産力を有する国が少ないことが挙げられます。

 このため、食料の安定確保のため供給国の多様化を図ることが主要な課題とされています。しかし、ごまについては、供給する国が数多あることが、かえって需給の不安定をもたらすという逆の現象が見られます。その事情を紹介しましょう。


【 図1 ごまの供給国別輸入量の変化 】
 図1 ごまの供給国別輸入量の変化
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