ごま油のお話し ― 香り豊かな食生活、そして、急変する国際市場 ―

3.海外に供給を依存するごま

 奈良時代から食されていたとの記録があるごまとごま油は、伝統食品の代表的なものと言っていいでしょう。でも、その伝統食品であるごまが国内ではほとんど生産されていないことをご存じでしょうか。

 かって、日本でもごまが広く生産されていました。しかし、いまでは自家消費用に細々と作られていることがあるかもしれませんが、国の生産統計にも記載されない状態にあります。

 日本の伝統食品が、海外から供給される食材によって支えられている例は決して珍しくありませんが、すべてを海外からの供給に依存しているのは、あまり例がないのではないでしょうか

 どうして国内ではごまが生産されないのでしょうか。一口で言うと、ごまの栽培はとても手間暇がかかるにもかかわらず収量が低く、収益が上がらないからです。

 ごまは、作物の特性として、茎の下の方から順番に花が咲き、最上部の花が開花するまでに20~30日の期間を要します。そして、実が付き、下から上へと時間を掛けて熟していき、上の実が熟す頃には下の実はさやが割れて、飛び散ってしまいます。

 このため、以前には、実が熟し始める頃に茎の下にござや紙を敷いて飛び散った実を集めるという手間暇をかけた栽培が行われていました。

 したがって、ごまは機械化農業に適しない作物であるということになります。そして、10アール当たり収量は30~40kg程度と低いため、高い価格で販売されたとしても、農家には適正な収益が得られないものでした。

 このような特性から、ごまは、長い栽培の歴史があり、多くの需要があるにもかかわらず、日本農業の現場から姿を消し、海外に供給を依存しなければならない状況になりました。

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