油糧種子の需給に不安材料 ― 主要産地を襲う異常高温と乾燥もしくは多雨 ―
3.不安材料が生じた世界の大豆生産

(3)高値が定着した油糧種子の価格とフレートの急上昇

 油糧種子の需給を反映して、油糧種子や植物油の国際価格は高値の定着した状況にあります。

 シカゴ市場の大豆価格は、前述のとおり安定から上昇に転じ、今後の需給を見守る状況にありますが、ウイニペッグ市場では菜種の価格1トン当たり440カナダドルを超え、上昇を続けています。

 これに加え、上昇が著しいのが油糧種子の輸送費(フレート)で、アメリカのガルフから日本の港湾までのバルク輸送費は、1トン当たり100ドルの声を聞く状況になりました。

 中国のオリンピック需要等による船腹需給の逼迫と、石油価格の上昇が、このように異常な輸送費の高騰をもたらしています。日本の製油企業が購入する大豆や菜種のコストにはこの輸送費が加算されます。原料調達コストの約20%が輸送費になるという異常な事態となりました。

 1バレル70ドルを超える石油価格の上昇は、バイオ燃料生産の経済的根拠を与えるとともに油糧種子はじめ農産物の国際需給逼迫と価格上昇をもたらし、更に輸送費を押し上げるという循環が繰り返されているのです。

 ただ、この循環は一過性のものではなく、構造的なものとなっており、油糧種子の国際需給と価格形成はこれまでとは異なる次元に移行したという認識が必要になっているようです。

 冒頭にご紹介した日加なたね予備協議で、カナダの代表はこのような発言を行っています。

 「日本の製油業界は、油糧種子の価格が高騰したことを危機と認識しているが、それは誤りである。油糧種子はじめ農産物の国際需給は新しい段階に移行したことを理解しなければならない。原料の価格は今後も高く、したがって、製品の価格をこれに整合するように引き上げていくことが必要なのだ」。

 日加なたね予備協議終了後、カナダの大きいスーパーを訪ねました。そこで陳列されている普通の菜種サラダ油の価格は、1.89リットル(1.7kg)で5.49カナダドルと表示されていました。日本で定番となっている1.5kgに換算すると4.84カナダドル、最近の為替相場で日本円に換算すると約560円になります。

 カナダ代表の発言どおり、菜種価格の高騰をそのまま反映した価格となっていました。日本までの輸送費などを考慮すると、仮にこの油が日本のスーパーの店頭で販売されれば、どれだけの価格になるのか、ちょっと考えさせられました。

PREVMENU