植物油の栄養問題を問い直す
トランス酸摂取の懸念?

 最近、アメリカでの規制を受けて、トランス酸の摂取が日本でも問題になりつつあるようです。トランス酸は、通常の脂肪酸が持つ二重結合がcis型であるのに対し、これがtrans型の二重結合に変成した脂肪酸を指しています。このtrans型二重結合は自然にも存在しますが、主に、植物油に水素添加して固形油脂をつくるときに生じることがあります。トランス酸は血中のコレステロールを上げることがわかっており、アメリカでは、一日のトランス酸摂取量の上限を、総摂取エネルギーの1%未満と決め、食品の成分表示にも示すようになりました。その背景には、獣肉を多く摂取し、水素添加した植物油を好むため、トランス酸摂取量がどうしても多くなりがちとなるアメリカの食生活の現状があります。

 ところが日本ではおそらくそれほど心配はないと考えられています。というのは、日本人はリノール酸のような多価不飽和脂肪酸を多く摂っているため、想定される量のトランス酸を摂取しても、コレステロール値は上がらないからです。しかし脂質の摂取には個人差があり、飽和脂肪酸を多くとっている場合には注意した方がよいでしょう。

PREVMENUNEXT