関税引き下げに備え、生産振興対策を強化

 タイでは、パーム生産農家の保護を目的として、輸入パーム油に140%を超す高い関税を課していますが、タイ国での植物油の安定供給を確保するため、一定量までの輸入については低い関税率を適用する関税割当制度を適用しています。2003年については、483万3,400トンまでの輸入パーム油については20%の関税を適用しますが、関税割当数量を超える輸入に適用される一般関税は144.6%という高率となっています。
表2 2002年~2004年のパーム油の関税割当スケジュール

  割 当 内
関税率(%)
割 当 外
関税率(%)
関税割当数量
(千トン)
 2002年
 2003年
 2004年
20
20
20
146.2
144.6
143.0
4,808
4,834
4,860
資料:タイ国 農業協同組合省 農業経済局
 しかし一方では、タイが加盟している東南アジア諸国連合(ASEAN)が加盟国間の経済連携を強めるため、1993年にASEAN自由貿易協定(AFTA)を締結し、加盟国間での輸入関税の引き下げを実施しています。タイにおいては2000年に全品目の85%、2001年には90%の品目についてASEAN域内関税率を0~5%に引き下げています。植物油(パーム油を含む)については、2002年に関税率が5%に引き下げられました。したがって、AFTA域内からの輸入については、先に述べた関税割当制度が適用されないこととなりました。2002年のパーム油の輸入はわずかな数量でしたが、今後、競合国であるマレーシアなどから安価なパーム油や原料であるパーム椰子の輸入が増加し、タイ国内の生産に大きな打撃を与えることが懸念されています。
 タイにおけるパーム生産のほとんどは、生産効率が低い零細農家が担っています。彼らは生産効率を向上させるための投資を行う資金もないのが実情です。このため、タイ政府では、2000年から2006年にかけて7年間に約42億バーツ(1バーツ=約2.8円)の予算を投入し、自由貿易システムの下で恒久的な競争力を確立することを目的として、パーム椰子およびパーム油開発計画を実施することとしています。この計画には、(1)品種改良により収量の増加を図ること、(2)植物油原料栽培に関する経済農業区域を策定し、不適当な土地での栽培を削減し、栽培適地において古い木から新らしい優良品種への植え替えを奨励すること、(3)原料生産から加工・製造までの一貫システムの中に生産者を組み込み、合意による集団化を進めて生産効率の向上を図り、生産コストを減少させること、などの具体策が盛り込まれています。
PREVMENUNEXT