伸びるカノーラ油、オリーブ油の消費

 アメリカにおける油脂の消費は、動物油から植物油へと進んでいますが、植物油の中でもより軽い油、健康にいいと言われる油を求めようとする傾向が見られます。
 先に述べたように、植物油消費に占める大豆油の地位は圧倒的ですが、近年、カノーラ油、オリーブ油などの消費量が急激に増えています(表2)。
 1990年と2002年とを比較すると、綿実油を除き、どの植物油も消費量が伸びていますが、カノーラ油は約2.4倍、オリーブ油はほぼ2.2倍に伸びています。これらの油は、体に良いとされる不飽和脂肪酸を含む割合が高く、健康を気にする消費者を中心に需要が増加しているものと思われます。
また、アメリカでは、トランス脂肪酸(Trans Fatty Acid)をめぐる議論が高まっています。トランス脂肪酸は、マーガリンなどを製造する際、液状の不飽和脂肪酸を固形化するために水素添加を施すことによって飽和脂肪酸に変化させる過程において発生するものです。最近の研究で、トランス脂肪酸は、いわゆる悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを増加させ、いわゆる善玉コレステロールであるHDLコレステロールを減少させる働きがあることが明らかになっており、心臓病の大きな原因の一つとなりうることが指摘されています。
表1にあるように、マーガリンの消費量が減少している背景には、トランス脂肪酸をできるだけ摂取しないようにしようという意識がはたらいているものと思われます。また、昨年9月には、大手ハンバーガーチェーンが調理油を改良することでフレンチフライなどのトランス脂肪酸を大幅に減少させると発表して話題になりました。
 現在、アメリカの食品には、脂肪に関しては総脂肪量と飽和脂肪酸の量しか表示することを義務付けていませんが、食品医薬品局(FDA)は、去る7月9日に、「2006年1月からトランス脂肪酸の含有量の表示を義務付ける。」ことを内容とする規則を発表しました。このため、今後は、トランス酸の含有量をゼロにする、あるいは大幅に減らすような新商品の開発が活発になることが予想されています。
表2 アメリカにおける食用植物油消費量の推移

(単位:100万ポンド、%)
  1990年
1995 2000 2001 2002 02/90増減
大豆油
コーン油
カノーラ油
ココナッツ油
綿実油
パーム油
オリーブ油
パーム核油
ヒマワリ油
ピーナッツ油
サフラワー油
12,164
1,149
577
897
851
256
211
362
200
197
58
13,465
1,298
1,271
941
996
201
227
293
168
193
17
16,210
1,711
1,744
968
674
375
455
243
357
244
102
16,985
1,342
1,493
1,100
767
471
455
355
375
250
89
17,350
1,400
1,389
1,201
725
474
455
440
315
245
93
43
22
141
34
▲ 15
85
116
22
58
24
60
資料:「Oil Crop Situation and Outlook Yearbook/October 2002」(米国農務省経済研究局)
注)2001年、2002年は見通し。
PREVMENUNEXT