エルニーニョと植物油
1.異常気象の陰にエル・ニーニョ現象

 “エル・ニーニョと植物油”といっても、油脂との関わりが薄い方には、何の話か見当がつかないかもしれませんね。

  実は、“風が吹けば桶屋が儲かる”式の推論をすれば、“エル・ニーニョ現象が起きれば製油業界が儲かる?”という結論になるのですが、果たしてうまくいくのかどうか、検証を試みましょう。 エル・ニーニョ(El Nino)という言葉は、スペイン語で“神の子”を意味します。異常気象の元凶というイメージとは全く異なるものなのです。例年クリスマス時期に起きる現象で、雨をもたらしたり、温かい海水が入ってきて水温が上がり、普段は見かけない魚が獲れたりすることで、ペルーでは恵みをもたらすものという認識がもたれています。クリスマスという時期を重ね合わせると、まさに、“神の子”の再来ですね。エル・ニーニョという言葉には、そのような自然の恵みに対する人々の感謝の気持ちが込められています。

 ところが、恵みをもたらすエル・ニーニョも、数年に1度は海水温度が異常に上昇し、1年以上の長期間にわたって継続することがあります。しかも、海水温度の上昇は南米沖に止まらず、赤道を挟む太平洋の中央部にまで及ぶ広範な地域で起きる現象であることが確かめられました。そして、この広範囲の長期にわたる海水温度の上昇が世界の天候に影響を及ぼし、時によっては、干ばつや洪水といった異常気象を地球規模でもたらすことがあることも分かってきました。こうなると、もはや神の子ではなくなり、災いのもととなります。そこで、このような大規模な海水面温度の上昇を、ペルー沖で毎年起きるエル・ニーニョとは区別して、“エル・ニーニョ現象”と呼ぶこととされたのです。

 エル・ニーニョ現象は、90年代以降では、91年春~92年夏、93年春~94年夏、97年春~98年夏、そして2002年春~2003年春と、ほぼ3年に一度の割合で生じています。もっとも、エル・ニーニョ現象が生じても、必ず異常気象に襲われるというわけではありませんが、世界各地で異常気象が生じた時は、その原因としてエル・ニーニョ現象が重要な役割を演じていることが分かってきました。気象への影響の出方は地域によって異なっており、北米では干ばつや寒波に、日本では冷夏、暖冬になるといわれています。
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