日本の食糧供給と植物油
 WTO(世界貿易機関)の多国間貿易交渉が2005年1月決着を目指して、議論が白熱しています。このうち、農業・食料の貿易交渉を議論する農業委員会は、交渉の基本的なルール(モダリテイー)を、予定した3月末までにまとめることができなかったのですが、引き続き早期の合意を目指して努力が続けられています。

 ところで、WTO貿易交渉というと、すぐに米や畜産物が頭に浮かびがちですが、この問題はわが国の製油産業にも深い関わりがあるのです。

 今回は、植物油の自給率、安定供給などの問題について考え、WTO貿易交渉がわが国の植物油供給とどのように関わっているのか、ご紹介いたします。
1.わが国の食料自給率は40%に

 植物油の自給率と安定供給について考える前に、わが国の食料自給率の現状と、問題点について整理しておきましょう。
 
農林水産省の食料需給表によれば、わが国の食料自給率は、平成12年に40%となりました。

 ここでいう40%の食料自給率は、供給熱量ベースの自給率のことを指しています。食料自給率を金額ベースで見ると、70%とその数字はいっぺんに跳ね上がることになります。

 つまり、平成13年に国内で食料消費に支払われた金額15兆円に対し、国内の食料生産金額は10兆4,000 億円ですから、その比率が70%になるということです。一概にはいえませんが、金額ベースの自給率が供給熱量ベースのそれより高くなるのは、国内で生産される食料品の価格が概して高いことを反映していると考えられます。


 海外の農業生産・輸出国は、農産物・食料品に対する輸入関税などの国境保護措置が高いことが円滑な貿易を妨げる原因であると批判し、WTOの多国間貿易交渉のなかで日本など輸入国の国境保護措置の引き下げを強く迫っています。

 しかし、これを安易に受け入れることは、主食の米などの穀物をはじめとして食料輸入の増加を招き、食料自給率が一層低下するばかりでなく、農業と農村が疲弊し、水資源の涵養、環境の保全などに著しい支障が生じかねません。WTOにおいて、日本政府が「世界各国の多様な農業の持続的発展」という理念を基本においた交渉が必要であると主張していることに留意しなければなりません。

 例えば、遺伝子組み換え生物の無秩序な移動が、途上国の自然相を破壊することを避けるため、生物多様性条約のなかでカルタヘナ議定書が締結され、日本をはじめ多くの国がこれに署名をしています。しかし、農業問題を経済的側面だけで捉えているアメリカは署名を拒否していることをどのように考えればいいのでしょうか。
MENUNEXT