ただし、このメリットを生かすために、気をつけなくてはいけないことがあります。まずは、食材が完全に浸る量のオイルを使うことと、漬けるときに余分な水分や空気を一緒に漬け込まないこと。食材の一部がオイルから飛び出していたり、食材のまわりに空気や水分が残っていたのでは、そこから風味が失われたり、カビたりしかねません。漬けているうちに水分が出やすい食材も、同じ理由でオイル漬けには向きません。
 もうひとつは、オイル自身の劣化を防ぐこと。オイルも空気に触れると酸化しますので、オイル漬けをする容器はしっかり密封できるものを。また、光や温度も嫌うので、冷暗所で保存することが基本となります(食材によっては冷蔵庫での保存も必要です)。

メリット2 風味を良くする
 第2のメリットは、食材の風味を良くすることです。
 油は水とは混ざりませんが、香りや味の成分の多くのものとたいへんよく溶け合う性質があります。オリーブオイルやごま油は、原料由来の独特の風味を持っており、こうした風味のあるオイルに食材を漬けると、その風味が食材に移って食材がぐっとおいしくなります。また漬け込んだ食材の風味がオイルに溶け出て漬けたオイル自体の風味を高め、それをまた別の食材に加えて全体をおいしい味にまとめていくというのもオイルならではの得意技。後ほど、参考レシピのなかでご紹介するフレーバーオイルはこうした使い方の代表例です。
 オイルのこうした性質を覚えると、オイル漬け以外でも応用ができます。例えば、にんにくや生姜の香りを効かせた中華の炒め物を作るのなら、熱した油に最初にねぎやにんにくを入れて香りを出し、あとから肉や野菜を入れてその香りを移すのが効果的。オイルを仲立ちに、それぞれのおいしさを引き出し、混ぜ合わせていくわけです。

メリット3 口当たりを良くする
 第3のメリットは、食材の口当たりを良くすることです。
 オイルそのものを飲んで「おいしい」とは感じにくいでしょうが、オイルが加わるだけで食材のおいしさが高まることは経験的におわかりになるでしょう。オイルには先に触れた、風味を引き出したり溶け合わせたりすることのほかに、味を感じるのを和らげる、口当たりをなめらかにするという作用もあります。例えば、オイルに漬けたオリーブは「味がマイルドになる」という感覚です。さらに、油独特の「美味さ」について、旬の魚は「脂がのっておいしい」と言われるように、もともと人間は油脂のマイルドな味やこってりした味をおいしいと感じるものなのです。
 また、オイルには肉をやわらかくする性質があります。ですので、肉質が硬く、あまりうま味もなさそうな肉は、ぜひオイル漬けに。柔らかでジューシー、マイルドでおいしい肉に変身させることができます。特に、味の淡白な鶏肉のオイル漬けはおすすめです。
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